O・ヘンリー『最後のひと葉』 

今更ながらO・ヘンリーである。いかに海外文学オンチの蕃茄山人といえどもさすがに既読。

  でも故あって最近金原瑞人訳に凝っている(この台詞を何回言っただろうか)ので、金原訳で再読した。先月読んだ『モルグ街の殺人事件』と同じく岩波少年文庫。少年文庫とはいえ、ルビと活字の級数以外は大人向けと変わらないのはシリーズのコンセプトだろうが、平易にして格調を失わないのが金原訳だ。

  収載作品は表題作のほか、「賢者の贈り物」「よみがえった良心」「株式仲買人の恋」など14編。

  O・ヘンリーの真骨頂といえば、温かなユーモアに粋でオシャレなウィット、どんでん返しのスピーディーな展開あたりだろう。これはそのまま金原訳の真骨頂だ。ベストマッチ(そんな言葉あるのかな)。面白くなかろうはずがない。

  読みすすんでんで行くと「ああ、これ円生に演じさせたかった」とか「これは旭堂南陵」とか思う。「ああ、○楽には絶対ムリ」とか。上質な「人情噺」なんだな。僕のように演芸血中濃度が高い読者から見るとたまらないのだ。これは原作の力だけでなく、新作落語を書いたりもする金原さんの感性によるものも大きいだろう。それでいてバックにはちゃんとアップライトピアノの音も聴こえてくる。やはりアメリカなのだ。

  先月金原さんはブレヒト作品を新作落語に翻案された。ぜひO・ヘンリーも落語にしていただきたいなどと思った。

O・ヘンリー著、金原瑞人訳『最後のひと葉』(岩波少年文庫・640円)