人形作家・石塚公昭その世界

昨日、「志らくのピン Part2」に一緒に行った石塚公昭は凄い人だ。作品世界はこちらから。「ギャラリー」をぜひ見ていただきたい。凄いです。

最初の出会いは偶然だった。何年か前、大崎の「ゲートシティ」の一周年記念イベントで「JAZZ祭」があり、友人のジャズボーカリスト・亜樹山ロミさんが出演してそれを聴きに行ったことがある(ロミさんについてはリンクと9月9日の日記参照)。その時、「JAZZ祭」の一環でコンサート会場に飾られていたのが石塚さんの人形だった。3、40センチのものなのに中からにじみ出て来る存在感。見る角度によって千変万化する深みのある表情。いっぺんでファンになってしまった。

  会場では先着100名様にこのジャズ人形のポストカードをプレゼントというのをやっていたのだが、そのポストカードの写真がいい。表情もいいし、背景もいい。トリミングも絶妙だ。説明ボードを見てビックリした。写真も石塚さんが撮っているという。しかも、オイルプリントというすでに「衰退(絶滅かも)」した手法を今に伝える貴重な写真家でもあるという。その時会場にご本人はいらっしゃらなかった。

  その後、じかに作品を見る機会になかなか恵まれずにいたが、昨年の春、渋谷で開かれた個展の最終日に滑り込みで伺うことができた。そして幸運なことに会場には石塚さんがおられ、さらに幸運なことに画廊オーナーが親切で、石塚さんを僕に紹介してくれた。それ以来のお付き合いだ。

  さっき、ホームページのギャラリーが凄いと書いた。凄いのはギャラリーだけではない。「日記」も凄い。ピリッと胡椒の効いた短い文章が絶妙だ。例えばすでに昨日の「志らくのピン Part2」のことを書かれているのだが、無駄を削ぎ落とした文体が、ただ饒舌なだけの僕と対照的だ(ぐっすん)。

  今年の夏休み、長男・虎太郎(仮名・中二)に、「美術展を見てその感想を書く」という宿題が出た。相談を受けた僕は、ちょうど横浜ランドマークタワーでやっていた石塚さんの展覧会に連れて行った。テーマは「文士」で、江戸川乱歩泉鏡花澁澤龍彦寺山修司等の人形が展示されていた。
  ふだん展覧会にまったく興味を示さない虎太郎だが、このときは夢中になってなにかメモをとっていた。そればかりか、説明ボードを読んで感化されたのか、
 
 「なあとうちゃん、俺、寺山修司読んでみたいな」

などと言い出した。

  家に帰って、僕の書棚の『書を捨てよ、町へ出よう』と『家出のすすめ』の所在箇所を教えた(それしか持ってない)。だが熱が冷めたのだろう、その後、虎太郎が手に取った形跡はない。