守屋淳『逃げる「孫子」』(青春出版社)

畏友・守屋淳氏の新刊である。サブタイトルは「他を凌駕する“兵法”の原点とは」。

  前著『孫子とビジネス戦略』(東洋経済新報社)では、あくまでビジネスのシーンに孫子の兵法を落としこんで論述してくれた。

  今回は、三国志の時代から現代までの「孫子遣い」の戦略の立て方、戦い方を縦横に語ったものだ。特にクローズアップしたのが書名どおりに「逃げ方」。孫子は逃げ方や引け際を重視する。さらには戦わないで住めば戦わないに越したことはない、極力避けろと力説する。

  曹操毛沢東ホー・チ・ミンチェ・ゲバラ・・・・勝ち方が巧い人は逃げ方も巧い。中でも毛沢東は国内覇権のための政治闘争「文化大革命」に、孫子の兵法を駆使したものだから、あのように凄まじい惨状を生むことになってしまったとの論考も実に面白い。

  時間のないビジネスマン向けの本だから、とにかく読みやすい。拾い読みするだけでもヒントはたくさんある。忙しくて本を読む時間なんか!、という人ほどお読みいただきたい一冊だ。新書版だから上着のポケットにもヒョイと入る

  それにしても、この本を読んでいると、ブッシュ大統領の耳元で囁きたくなる。

「閣下、まずいっすよ」

逃げる孫子



『逃げる「孫子」―他を凌駕する“兵法”の原点とは』(青春出版社・700円)