「自分の周りにおきていること?」

 昨日に続いて今日も本屋さんのイベントに行ってきた。神田三省堂本店で開催された高橋哲哉さんと金原瑞人さんのトークセッションだ。

  テーマは「自分の周りにおきていること?」

  このトークセッション、『茶色の朝』と『チョコレート・アンダーグラウンド』の刊行記念ということになっている。

  この2冊の本について軽く紹介しよう。『チョコレート・アンダーグラウンド』は以前この日記にも感想を書いた。天才・アレックス・シアラーの作で翻訳は金原さん。

  ネタバレをしない程度にあらすじを紹介すると・・・・。
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 舞台はイギリス。選挙で勝利をおさめた“健全健康党”は“チョコレート禁止法”を発令、国じゅうから甘いものが処分され、違反者は矯正施設で洗脳される。そんなおかしな法律に戦いを挑んだ2人の少年、ハントリーとスマッジャーは、お菓子屋のバビおばさんや甘党の古書店主・ブレイズさんの協力の下、チョコレートを密造し、“地下チョコバー”を始めることにした。目指すは「チョコレート革命」!!  でも敵もそんなに甘くない・・・・・。
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  一方の『茶色の朝』はフランスで50万部のベストセラーになった本だ。心理学者のフランク・パブロフの書いた本だ。原本はもともと11ページのパンフレットだったが、日本版にはヴィンセント・ギャロの絵と高橋さんによるメッセージがついた。

  こちらはネタバレ御免であらすじを紹介すると・・・・。

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舞台はフランスと思しき国。突然、「茶色の猫以外は飼ってはいけない」という法律が出来た。主人公「俺」は疑問に思いつつも「ま、いいか」と見過ごしていく。そして次は犬も同様に定められ、茶色以外の犬は処分されていく。新聞も「茶色新報」以外は発禁になる。またもや疑問に思いつつも「茶色に安心に包まれるのも悪くない」と受け入れる「俺」。ある日、友人が逮捕された。かつて茶色以外の猫を飼っていたと言う罪だ。そう言えば「俺」も以前に飼っていた。そして、ついに「俺」の部屋のドアが叩かれる・・・・。
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  言うまでもないがこの寓話、「猫」や「犬」を、たとえば「思想」や「心情」「宗教」等と置き換えてみればわかりやすいと思う。


  この共通のテーマを持つ2冊の本の作り手二人に、その内容を、身の回り、つまり2004年秋の日本に落とし込んで語り合っていただくというのが、今日のトークセッションの趣旨だ。

  またしても長い前置きになってしまった。


  三省堂本店8階のホールにて18時から行われた。会場では偶然、というか必然、義太夫三味線の鶴澤寛也師匠にお会いした。そうだ、忘れていたけど、そもそも金原さんに僕を紹介してくれたのは寛也師匠だった。


  トークはそれぞれの本が生まれた背景や、お互いの本の感想などを中心に語られた。またメディアの第一線にいて、実際に世の中が「茶色」に染められつつある現状についても語られた。また表現者、発言者の立場からこの「茶色化」にどのように対処していくかがそれぞれ語られ、興味深かった。いかにも固くマジメそうな高橋さんとヤンチャ坊主っぽい金原さんの対比も面白かった。

 
  後半は質問タイム。僕も昨日の「バトルトーク」でのお話を聞いて気になっていた、近年のメディアの変容についての質問をさせていただいたが、高橋さんも最前線にいて肌で感じているとおっしゃっていた。

  あと、ある方の質問で「危機はわかった。ではどうすればいいのか」というのがあった。

  ではどうすればいいのか・・・・・・。それを考えるのが一人一人の仕事だと思う。「どうすればいい?」なんていう他人任せの思考停止こそが、長いものに巻かれる前兆と言うことなのだろうと思う。って「茶色の朝」に高橋さんが書かれていたことの受け売りだけど。

  心優しい高橋さんは質問者が傷ついたり恥をかいたりしないように気を遣って、やんわりとやさしく答えられていたが、趣旨は上記のようなことだったと思う。



アレックス・シアラー著/金原瑞人
チョコレート・アンダーグラウンド
求龍堂・1,200円)

フランク パヴロフ作/ヴィンセント・ギャロ絵/藤本一勇訳/高橋哲哉メッセージ
茶色の朝』(大月書店・1,050円)

チョコレート 茶色