もう、とにかく愉快で可愛くておかしくて足がバタバタしちゃう本である。
内容はまさしく身辺雑記。伸坊さんと奥さんのフミコさんの日常をつづった日記風エッセイだ。タイトルの『笑う茶碗』は『笑う夫婦茶碗』の略らしい。
帯に曰く
「目標 へらへらわらってたのしくくらす。」
そして、
「内容 そんじょそこらのにちじょうさはんじ」
まあ、そういってしまえばそうなのかも知れないが、この本の面白さは並みじゃない。
伸坊さんのお仕事は幅広く多岐にわたっているが、その中でも出色なのが『本人の人々』『歴史上の本人』などの「変装もの」だ。伸坊さんが織田信長、西郷隆盛から、新庄、俵万智、はたまた仙台四郎にまで変装する爆笑ビジュアル本だ。
伸坊さんは言うまでも無いが、イラストレーターとしてもデザイナーとしてもエッセイストとしてももはや重鎮だ。つまり偉いのだ。それなのにそれなのに腹掛けをしておかっぱのヅラをかぶって金太郎になりマサカリまで担いじゃうのだ。お好きなのだ。
そして、そんな伸坊さんの敏腕マネージャーであり、変装のプロデューサーであり、スタイリストであり、カメラマンであるのが奥さんのフミコさんだ。お好きなのだ。実に冗談好きで面白がりなご夫婦なのだ。
そんなお茶目なお二人のフーフ生活である。面白くないはずがない。公園で草笛を吹く中年男に「草笛光男さん」と密かに名前をつけて観察し、ナメクジを愛で、モンゴル力士の本名を暗記し、八百屋で買ったえんどう豆を鉢植えにして殖やしマメゴハンを炊き、人間ドックを楽しみ、「見回り」と称して深夜の散歩を楽しむ日々・・。本当になんというか、かわいく微笑ましい。
この本に感動した作家・嵐山光三郎氏は、「フミコさんを今年の人妻グランプリ」に認定する」と宣言し、本当にトロフィーを贈ったらしい。
もし投票制であるなら、僕も一票、投じたい。