愛新覚羅王女の悲劇 川島芳子の謎

そんなわけで最近読んだのがこの本。

太田尚樹著『愛新覚羅王女の悲劇 川島芳子の謎』(講談社・1995円)

愛新覚羅王女の悲劇 川島芳子の謎

評伝でもない、かといって小説でもない「ドキュメント・ノベル」というスタイル。作者の自由な想像力が羽ばたいている。うん、こういうスタイルも読みやすくて良いんじゃないですか。学者先生が書いたとは思えない。テンポもいい。まるで講談を聞くようないい心持ち。

惹句に曰く、「動乱の満州、中国で暗躍し、「東洋のマタ・ハリ」「男装の麗人」と称された川島芳子のミステリアスな生涯と死の真相に迫る。」

だけど「死の真相」にはそれほど迫っていない。昨日も書いたけど、「死の真相」にはあまり迫らないほうが良い。

他の川島ものと比べると「男の性」がよくかけているってことが特長かな、俗な言い方だけど。そういえば現在手に入る川島ものってすべて女性の書き手だったんだよね。

男装の麗人・川島芳子伝   
 清朝十四王女 川島芳子の生涯   
 評伝川島芳子 男装のエトランゼ


男性の書き手だけに、芳子みたいな剣呑な女についつい近づいていってしまう悲しい男の性がよく描けているような気がするのだ。まぁ、どいつもこいつもろくでもない連中なんだけど、芳子を巡る男の中で唯一かっこよく描かれているのが、笹川良一。ご存知、競艇の胴元にして政財界の黒幕。戸締り用心、火の用心の人。

これはちょっとかっこいいぞ。良過ぎるくらい。度量の大きな男としてのかっこよさが存分に描かれている。このへんも「ドキュメント・ノベル」の醍醐味かもしれない。

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