夏の浪速の芸尽くし(1) 「天満天神繁盛亭」へ。

〔8月6日の日記 その1〕

大阪駅桜橋口についたのは6時10分。約8時間のバスの旅だった。

ここから一気に南下する。いわゆる大阪のキタがこのエリア、大阪駅や梅田を中心にした地域である。一方のいわゆるミナミというのが難波(なんば)周辺。その更に南に、近年人気の「新世界」「天王寺」がある。


僕がこれから向かうのが更に南。大阪のディープサウス。今回の旅のベース・キャンプとなる「我孫子道(あびこみち)」。大和川の向こうは堺市となる大阪市の最南端だ。そこにツレの実家があって、義妹が華麗に一人暮らしをしている。その義妹の旅行中に、留守番がてら大阪観光をしようというのが今回のプランである。


大阪駅から地下に潜り地下鉄の梅田駅へ。御堂筋線で「なんば」まで。マナー向上キャンペーンのポスターにいきなりグッとくる。整列乗車キャンペーンでレトロシネマ仕立ての「並んで行進曲(マーチ)」。

つまり「並んで待ち!(命令形)」である。そして、

監督・真奈マモル(マナー守る)

脚本・奈良花茜(並ばなアカンねん)

こういうのが決まる企画会議、見てみたいね。


大村崑は今でも大スターである。


「なんば」からは南海本線で南下。約20分の「住之江」で下車して徒歩10分。実家に着いたら朝7時。勝手知ったる親類の家で、シャワーを浴びて一休み。

大画面で「ゲゲゲの女房」を見た後はついウトウト。宅急便のドライバーに起こされた。荷物は宅急便で送ったのだ。


身なりを整え行動開始。前夜、ああ東京駅で買った「東京バナナ」を持って、両隣のお宅に「お騒がせします」とご挨拶。ツレ姉妹が子供のころから知っているお宅なので、頼りになるおばちゃんたちだ。僕も20代のころからの付き合い。

「あらぁ、ずいぶんとスマートにならはったわねぇ」

と冷やかされた。


ふたたび「住之江」駅まで歩き、今度は一気に北上。「天下茶屋」で地下鉄・境筋線に乗り換え、南森町へ。


今回の旅の目的のひとつ、駅から5分の「天満天神繁盛亭」である。


大阪に漫才やコントの小屋は数多あっても、じっくりと上方落語を聞かせる小屋がないことを憂いた桂三枝師匠をはじめとする有識者の努力で先年完成した寄席だ。


ネットで予約していたのでいい席に座れた。僕は上方落語には暗いので知ってる噺家さんは林家染二さんだけだったけど、やっぱり面白かったなぁ。


あと、お茶子さんがいいね。東京の寄席では、出演者の名前が書かれた「めくり」をめくり、座布団をひっくり返す「高座返し」は前座さんの仕事だけど、上方では紺の着物に赤い前掛けが可愛い「お茶子さん」という若い娘さん(若くない娘さんの場合もある)の仕事だ。

本では知っていたが実際に見るのは初めて。可愛くて清潔なお色気もあっていいものだなあ。

つまり「和風メイド」さん。「和萌え」とも言える。


それとともにここではもうひとつ、初めて見たものがあった。

劇場や映画館などで、係員の注意にもかかわらず携帯電話を鳴らしてしまう輩はどこでもいる。珍しくない。しかし芸人さんが落語をやっているのに、そのまま電話に出て話し出しちゃう人は初めて見たよ。60代くらいの女性。それまでせっかくいいムードだったのに、なんとも残念だった。


そんなことを考えながら外に出たら、繁盛亭の並びで見つけたのがこのお店。

たぶんスナックだと思うのだけど「ザンネン」と言うお店。赤い落款は「惜」の一字。

さっきの電話おばさんを連れて行って小一時間説教したい気分だった。



       ( 続 く )

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