「関 民 帽子遺作展」そして「帽子作家 関 民 Tami's Spirit -こころが動きだすヒントー」


夏日となった今日、秋川へ。僕が秋川に行くというときの行き先はたいてい決まっている。 「綜藝舎ギャラリー」だ。


今日初日の「関 民 帽子遺作展」。


国立には関民(せき・たみ)という帽子作家がいる。いや、いた。昨年の年末に亡くなった。享年91。


国立の長老・彫刻家の関頑亭先生の奥様でもある。


40年以上、国立に、まるでジブリのアニメに出てくるような可愛らしい帽子の工房を持ち、多くのお弟子さんを育てていた。その作風は変幻自在。オーソドックスでクラシカルなものから「近未来」風のものまで多岐にわたる。


「帽子も町の景観の一部」が持論だった。でも僕に言わせれば民先生ご自身が町の景観の一部だった。つねにヴィヴィッドでキュートなファッションで町を闊歩し楽しませてくれた。明るく優しくかわいい人だった。


市外の方にわかりやすいように説明すると、ターシャ・テューダーのような人だった。ターシャが庭を造り絵や絵本を描いたように、民先生は帽子をつくりステキな言葉の数々を残した(そのステキな言葉についてはのちほど説明する)。


僕も親しくさせていただいていた。カラオケや句会でご一緒したこともあった。


「あなた、痩せてイケメンになったじゃない」とからかわれたこともあった。「わたしネ、昔、あなたのおばあさまにずいぶんかわいがってもらったのよ」と言われたこともあった。孫すら可愛がらなかった孤高の祖母が、と、にわかには信じがたく、「可愛がられた」は相撲部屋のそれではないかと心配もしたのだが、後輩(町内の)に親切にするような心根があの祖母にもあったとはうれしく、いずれその辺をじっくり伺おうと思ったら旅立ってしまわれた。


葬儀は2月末に中野坂上名刹宝仙寺で行われた。地元の人や帽子のお弟子さん関係が大勢集まった。民先生の帽子を着用した人がたくさんいた。あんなに帽子率が高いお葬式は初めてだった。葬儀委員長はこの春、国立市長となったガマさん。在野での最後の大仕事だった。嵐山光三郎先生とお弟子さん代表が弔辞を読まれた。


僕にとっては退院後、初めての本格外出だった、というか、その日に合わせて交通機関に乗る練習をツレとともに重ねた。お葬式の前々日に自慢の金髪を切った。民先生ならきっと「あらあなた、似合うじゃない。その髪色に合う帽子はネ」と褒めてくれたとは思うけど、やっぱりけじめと思って。


、と、民先生の思い出を書き始めたらきりがないのだけど、今日からゆかりのふかい「綜藝舎ギャラリー」での遺作展が始まった。今朝の毎日新聞にも大きく取り上げられた。


会場には民先生の帽子がそれこそお花畑のように咲き乱れていた。すべて非売品。個人蔵のものが持ち寄られた。見覚えのあるものもいくつかあった。


これは貴重な展覧会。国立からはちょっと遠いかもしれないけど、うまく五日市行きに乗れればすぐ。秋川の駅前。


26日(木)まで。営業時間は18時まで(最終日は16時まで)。詳細は下記の画像をクリックください。


関民帽子遺作展
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そして、このたびステキな本が出版された。


「帽子作家 関 民 Tami's Spirit -こころが動きだすヒントー」



関民帽子遺作展
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という本。著者はお弟子さんの更谷いづみさん。発行元は「izumaqui」 。

B5、160ページ 、1575円


内容は帽子の写真の数々や民先生のアルバムや評伝。帽子を作った事始が、敗戦時に大陸から命からがら脱出した際、男に化けるために坊主にした頭を隠すため引揚げ船の船内で父君のソフトを女性モノに改造したこと、などというエピソードも面白い。


そして「民言葉」。民先生が周囲に語られた含蓄ある言葉の数々の採録だ。


出来ない、チャンスがない、もう若くない

そんなことばかり言う人がいるけど

それは怖がっているだけよ

それを始める時があなたの人生の中で

一番可能性があって、一番若い時なのよ             
 ・ ・ ・ ・・・・・・・・・ (はじめるとき)


この他にも身近に謦咳に接したお弟子さんならではのステキな言葉が宝石箱のようにたくさん詰まっている。民先生、本当に人を育ててこられたのだなぁとおもう。この本もその結実のひとつだ。



国立市内では、増田書店、東西書店、そしてキャットフィッシュにおいている。市外の人にはちょっと入手しにくいかもしれないけど、興味のある方は発行元の「izumaqui」にお問い合わせください。


あ、もちろん「綜藝舎ギャラリー」でも売っている。<今日の一句>


街も人も 見守ってをり 夏帽子



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