駿河の国あれこれ 2《新金谷 中》

そういうわけで、大井川鉄道の(車での)玄関口、「新金谷」駅の駐車場に車を入れた。

係員(と言ってもバイトのおじいさん)の指示に従い所定の場所に車を停めて、駅舎に行こうとすると呼び止められた。

車の鍵を預けよ、という。帰りにはどうするのかと問えば、帰りの時間にもここにいるので声を掛けよとのこと。

さればと鍵を渡すと、中央にミシン目のある荷札を鍵にくくりつけ、荷札の上部と下部に車のナンバーをボールペンで書き写す。そしてミシン目でピッと切って「半券」を僕にくれた。


千頭へのSLでの小旅行を終えて帰ってきて、鍵を返してもらおうと件の係員を探す。「帰りの時間にもここにいるので声を掛けよ」と言っていた。僕も聞いたし、ツレも聞いた。だけど誰もいない。

あれれと思ってまわりを見回すと、駅舎に隣接した木造の建物の前に、

「鍵引渡し所」

なる看板がある。なんだおじいさんあそこにいるのか、と思って入った。

建物の中は人の気配がない。「こんにちはー」と声をかけても誰も出てこない。困ったなぁと室内を見渡すと、入口の奥の壁に無数のフックが突き出た板があって、そこに多くの鍵が掛かっていた。

「放置プレイかよ!!」

僕の鍵はすぐに見つかった。見慣れた鍵だからというのもある。でもそれだけではない、車のナンバーを書いた荷札がついているからすぐにわかるのだ。


でも、これってちょっと怖いぞ。だって駐車場で気に入った車があったら(高級車も結構あった)そのナンバーをメモして、同じナンバーの荷札のついた鍵をゲットしちゃうことだって簡単に出来るのだから。あまりに性善説な管理体制だ。

当然ながら、僕の愛車は無事だった。でも14年間乗ってもう飽きたので、違うのに乗って帰ろうかと思った。