・・・・・5月2日の旅日記 (序)・・・・・
GWの真っ最中ゆえ大混雑を予想していた成田空港は、思いのほか閑散としていた。人が少ないので白い照明がことさらに眩しい。
新型インフルエンザを警戒して一応マスクをする。使い捨てながら一枚350円の高級品。
伝染病を気にしながら白く眩しい成田空港を歩いていると、なんとなくここがヴェニスのような気がしてくる。もちろん自分がアシェンバッハ博士になった気分である。頭の中でマーラーの第五交響曲が鳴る。
違うのは傍らにいるのがギリシャ神話から抜け出たが如きタッジオではなく、鳥獣戯画から抜け出たがごとき次男・三吉(仮名・中1)であることぐらいだ。
我が家では、子どもが上の学校に上がるとき、僕と記念旅行をすることを常としている。
長男・虎太郎が小学校に上がるときは上海、中学に上がるときはソウル、高校に上がるときは香港・広州、大学に上がるときは北京。
長女・花子が小学校に上がるときは大連、中学に上がるときは上海・蘇州。高校に上がる今年はツレと泊りがけでシルク・ド・ソレイユを見に行った。
そして三吉は小学校に上がるときに沖縄に行った。
そして今年は瀋陽。中国の東北部。遼寧省の省都である。いわゆる「旧・満洲」で満洲時代は「奉天」と呼ばれていた。そして女真族(満州族)の王朝である「清」の創業の地でもある。太祖・ヌルハチが創った古都である。
なぜ、旅行先を瀋陽にしたか。
僕は長い時間飛行機に載るのが嫌いだ。昨秋のベトナムの7時間が限界だ。そうなると中華文化圏はなかなか出られない。
で、どうせ行くなら初めて行くところにしたい。そして経由地無しで直行便が必須(いろいろと軟弱な注文が多い)。
そしてかねてよりの満洲マニアである。幻の帝国・満州国には大いに興味がある。決して「鉄っちゃん」ではないけど「満鉄っちゃん」な僕としては見ておきたいものもある。
そんなわけで瀋陽に行くことにしたのだ。三吉の意向は一切反映されていない。
僕らを乗せた「中国南方航空628便」は13時25分、無事に飛び立った。(続く)
(明日から、瀋陽の旅日記を書きます。多分かなり長くなります。心してお読みください。)