市川の文化人展『永井荷風』−荷風が生きた市川−

banka-an2004-03-14

市川の文化人展『永井荷風』−荷風が生きた市川−に行ってきた。市川市の市制70周年記念事業だそうである。本八幡市川市文化会館にて。

 先週の「永遠の薔薇 中井英夫へ捧げるオマージュ展」同様、主たる目的は人形師・石塚公昭さん作るところの「荷風人形」と、その荷風人形が現在の市川市の風景を背景にした写真(撮影も写真家でもある石塚さん)だ。

 会場は市川市文化会館本八幡の駅から徒歩10分くらい。

 主催は市川市で組織された「永井荷風展実行委員会」。共催は(財)市川市文化振興財団と 紀伊國屋書店。評論家の川本三郎氏が監修している。

 ひとつの呼び物がビデオ上映で、一日に2回、11時からと15時から「永井荷風――個我の自由を求めて」が上映されるとのことであった。11時からのはとても間に合わないので15時からの回を目指して行った。

国立←→本八幡は思いのほか遠く、会場に着いたのは14時55分。やっと間に合った!!上映会場はどこだろう? 迷っている時間はない、係りの人に聞いてみた。

「もうしわけありません。今日は会場の都合で午後の上映は中止なんです」

そ、そんなぁぁぁぁ。

 ショック。この気持ちのまま展示を見ても頭に入ってこないので一旦、外に出て頭を冷やすことにした。

 そうだ、荷風さんがたびたび通っていた駅前の食堂「大黒屋」に行って、荷風さんお気に入りのカツ丼喰って菊正宗を一合飲んでから出直そう。

 でも、駅に向かって歩くうちに「なんかそれも観光客みたいだな(観光客なんだけどね)」と思い直し、手近にあったジョナサンに入り、フライドチキンと生ビールにした。


  気分を切り替えてから見る展示は、これはまた見ごたえのあるものだった。永井荷風はその晩年を市川市で過ごした。今回の展覧会は市川における荷風をテーマにしたものだ。

 石塚さんの荷風人形が面白い。ちょっとくたびれた背広を着て買い物籠を下げて、その買い物籠からは大根がのぞいている。荷風が座敷に七輪を持ち込み自炊をしていた故事(?)にならったものだ。刻み野菜を入れた炊き込みご飯を作っていたそうだ。あと、独活(うど)が好物だったとか。なんだ、だったら市川じゃなくて立川にくればよかったのに(立川は日本一の独活の生産地である)。

 この人形、顔が良いんだ、気難しそうで。でもなんか飄々ととぼけてて。夜中に会場を抜け出して歩き回りそうに存在感がある。

 会場には荷風が寄寓していた小西家の縁側を復元してあり、雰囲気は満点。遺品の机・眼鏡・衣類・下駄・時計なども展示されている。

  パネル展示を見ていたら誤植を2箇所発見。係の人に小声で教えてあげた。

  生前の荷風を知る市川の町の人々の証言も集められていて興味深い。まあ、行く先々でトラブルを起こして困った爺さんだったのは有名な話だが、まあそのとおりだったらしいことが、展示の数々からも読み取れる。


市川の文化人展『永井荷風
荷風が生きた市川−
3月13日(土)〜28日(日)火曜休館(16・23日)
午前10時〜午後6時(入場無料)
市川市文化会館 市川市大和田1−1−5 tel 047−379−511



  よくロック系のコンサートなど行くとコスプレのファンがいると聞く。荷風展でも発見。黒のコートにソフト帽で決めているね。