守屋淳著『孫子とビジネス戦略』 

 僕だってビジネスマンのはしくれである。ビジネス書だって読むのである。仕事もせずに落語やジャズや俳句に呆けているわけではないのである。

  そういうわけで、今日読み終えたのがこの本だ。本を読むのは決して遅いほうではないのだけどずいぶん時間がかかってしまった。

  つまらなくて退屈だから時間がかかったのかって? 逆である。面白すぎて時間がかかってしまったのだ。一章一章が面白くかつ含蓄がありすぎて、ちょっと読んでは本を閉じてかみ締め、また読んでは本を閉じてかみ締めているのでなかなか前に進まなかったのだ。

  この本は「戦わずして勝つ」「敗けない戦略」の極意で世界一の兵法書となってきた「孫子」のエッセンスを、現代的な感覚で解き明かした凄い本だ。特に「血の流れない戦争」とも評されるビジネス場面に焦点を当て、孫子の戦略・効用を事例で紹介している。

  「キリン vs アサヒのビール戦争」「コークvs ペプシのコーラ戦争」「ビル・ゲイツの世界戦略」などを材料に、孫子の名言を引き、いろいろな場面を解説している。

  特に僕が唸ったのが、

  「主は怒りを以って師を興すべからず、将は憤りを持って戦いを致すべからず。利に合して動き、利に号さずして止む」

  つまりはリーダーたるものは怒りにまかせて戦争を起こしてはならない。状況が有利であれば行動を起こせばいいし、有利でなければややるべきではない、と言うことである。僕はリーダーなどではないが、今まで何度これで失敗してきただろうか。


  ただ、一箇所だけ孫武先生に反論がある。

「朝の気は鋭、昼の気は惰、暮れの気は帰」

  つまりは人の気力は、朝は旺盛であるが、昼になるとだらけ、夕方になると休息を求めるもの」とのことである。
  
  僕はまったくの逆である。朝は寝ぼけていて使い物にならないが、夕方あたりから元気になり、つい会社で日付が変わるまでガンガン仕事をしてしまう。

あっ、だから効率が悪いのか!?  自爆・・・・・。


  それはともかく書影をご覧いただきたい。かっこいいでしょ。

守屋淳著『孫子とビジネス戦略』

今までのこういった本だったら、万里の長城をバックに龍と虎が吠えあって、中央には秦の始皇帝諸葛孔明が睨みを効かせているような、そんな表紙を思い浮かべてしまうのだけど、この本の表紙はシンプルでモダンな感じだ。洋書みたいである。

  中身も横書きだ。句読点も「 、 。」でなく「 , . 」。途中まで気づかず読み続けてしまったくらい、もちろん違和感はなく、すっきりして読み易い。チャート図なども多くとてもわかりやすく孫子の兵法のビジネス戦略への活かし方が理解できる。