ロシナンテの夜

 台風や酷暑の影響で自然のバランスが崩れ、人里に熊が下りてくる騒動が相次いでいる。亡くなった方や怪我をされた方、怖い思いをされた方は大変気の毒なのだが、食糧を求めて迷い込み処分された熊の姿も哀れを誘う。

  でも今日は熊の話をしようと思ったのではなくて、今日も昨日、一昨日と同じく、またしてもロバの話である。僕の話はくどいぞ。

  世界一有名なロバといえば、やっぱりロシナンテだろう。ロシナンテといっても数年前、バラエティ番組で突然有名になってしまったあのロバのことじゃないよ。

  僕が言っているのは「ドン・キホーテ」の道連れの方である。「ドン・キホーテ」といっても歌舞伎町の入口にあるディスカウントショップではなくて、スペインの文豪・セルバンテスの方である。

  セルバンテス以来、旅の道連れといえばロシナンテである。


  こう見えても僕は、その昔はバイク乗りだった。スズキのGT380という、いささかお品の無いバイクを駆っていた。街乗りと言うよりツーリング派で、長い休みにはバイクで主に東北方面に行っていた。

  いつもソロ・ツーリングだった。昔から団体行動が苦手だった。三亀松師匠に言わせれば、「ひとりだから気が合うわね♪」てなもんである。


  ここから先は少し恥ずかしい話になる。

  ある時期、僕は愛車GT380にロシナンテという名前をつけていた(キャー!恥ずかしい!)。旅の供という意味だ。笑うな! 僕だって恥ずかしい。16歳のことである。若気の至りということでお許しいただきたい。

  でも、これは長続きしなかった。ロシナンテという名前を友達が認知してくれずに、

イヨマンテ

としか呼んでくれなかったのだ。伊藤久男か、ワシは!!



あーほいやぁー!! って叫びたい気分だった。