潮田登久子写真展『本の景色ー大辻清司先生のアトリエ 』

 新宿の「Contenporary Photo Gallery」で開催中の潮田登久子写真展『本の景色ー大辻清司先生のアトリエ 』に行ってきた。

潮田さんは夫の写真家・島尾伸三さんと組んだ中国雑貨の写真で有名だが(いまだ冷めぬ僕の?中華熱?の原因である)、お一人の作品でもいい仕事をたくさんしておられる。帽子の写真集「HAT」。いろんな人の暮らしが見える冷蔵庫の写真集「冷蔵庫」などなど。

近年、取り組んでおられるテーマが「本」。

一昨年の秋〜冬にかけて各地で開催された「本の景色/Biblioteca」も凄かった。本をオブジェとしてモノクロ写真で写した作品集で、虫に食い荒らされてすっかりレースのようになってしまった経文や中世ヨーロッパの古く巨大な聖書。黙ってそこに置かれているだけで辺りを睥睨する憂鬱な廃帝のような威圧感を感じさせた。月並みだけけど「薔薇の名前」を思い出した。

今回もある意味ではその続編なんだろうけど、サブタイトルに「大辻清司先生のアトリエ」とある。なんだろう。写真に疎い僕でも名前だけは知っている写真家の故・大辻清司氏に関連したものであることだけは間違いなさそうだ。

何の解説も掲示されていないのでわからないのだけど、主亡き後のアトリエを写したもののようだ。

うず高く積まれた資料。マジックで何か殴り書きしてあるフィルムリールの缶。広口ビンに入れられているミリタリーのフィギュア・・・・。一つところの安定にとどまらずに常に新しいものを求めて前進し続けた大辻氏そのもののようなアトリエだ。テーマが拡散しているようでビシッと一本スジが通っているなんとも潔い「本の風景」だった。なんか心地よいうっすらとしたホコリの匂いが香ってくるような素敵な展覧会だった。


この展覧会、同ギャラリーの年間予定表のパンフレットで見つけて行ってみたものだ。2月には夫の島尾伸三さんの展覧会があったんだけど、どうにも日程が合わずに行きそびれてしまった。

このギャラリーもちょっと変わったギャラリーでね。新宿の伊勢丹パークシティーの裏手なんだけど、交通激しい靖国通りから一本入った、なんか昭和40年代の雰囲気のエリアにある。ギャラリーが入っているビルも古くて、なんかアジアの香りがする。妙な居心地のよさがあって、つい置かれていた本をソファーに座って読みふけってしまったりする。実は前段で、僕が大辻氏について利いた風な事を書いているのは、今日ソファーで大辻氏の資料を読んでの付け焼刃なのである。


潮田登久子写真展『本の景色ー大辻清司先生のアトリエ 』は3月20日まで。