越南点描② スイミーになって

それだけのオートバイが爆走する道である。横断するのは至難の業だ。まず車列が途切れると言うことがない。途切れるのを待っていたら半日は確実にかかる。まるで巨大な龍のようだ。


さて、どうしよう。


そこで僕が考えたのが「スイミー作戦」。


スイミー」をご存知か。オランダの絵本作家レオ・レオニの名作である。谷川俊太郎が訳して教科書にも載っている。学芸会でも定番中の定番である。



スイミーは泳ぎの得意な黒い小魚。でもスイミーのいる海には食いしん坊の大マグロがいて仲間がたくさん食べられていて、残った仲間も岩陰でびくびくして過ごしている。そこでスイミーは一計。みんなで集まって大きな魚のふりをして泳ぎマグロを追い払う作戦だ。もちろんスイミーは自分だけが黒いので、目の部分を担当する。かくして小魚たちの群れははマグロを追い払い、平和な海がやってくる・・・。


というお話。これですよ。幸い僕は黒いポロシャツを着ている。僕が目の部分を担当するので皆で固まって渡ればなにか大きな動物かと思って避けてもらえるのでは。


という結構な提案をしたのだがあえなく却下。「それでは“赤信号、みんなでわたればこわくない”と大差ない」というのがその却下理由。なるほどそれはそうだ。うむ。


スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし