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何か胸騒ぎがすることってある。たとえば家族が出かけていて予想より帰りが遅くなったときとか。なにかトラブルに巻き込まれたり巻き込んだりしたんじゃないかと。
ひとからは冷血動物などと謗られる僕だが、人並みにそういう胸騒ぎはある。
ま、結局いつも、「何事もなくてよかった」「何もなくてよかった」って胸をなでおろすんだけどね。
今朝のことである。いつものように通勤していてふと心にさざなみが立った。
今日は資源ゴミの日らしく、歩道の隅に大量の本が積み上げられていたのだ。
もしかしたらこの中にお宝が！？
以前もこの近くで資源ゴミの日に｢夢野久作全集｣が捨てられていたことがあった。その日はその前にしばし佇み、遅刻しそうになってしまった。
いや別に拾って帰ろうなんて思ったわけじゃない。集積場の空き缶を持ち去った男性が見せしめで逮捕されたのも記憶に新しいところだ。もし追いかけられたら逃げられないし、よしんば追いかけられなくても僕は身体的特徴がありすぎて、瞬殺で逮捕されるだろう。
個人的な欲得じゃなくて、貴重な書物文献が溶解されてトイレットーパーや段ボールになってしまうのはあまりにもったいない、大きく言えば人類全体の損失ではないかと思ったのだ。
そんなわけで視界の片隅にその本の塊を見たときは心が波立ったのだが、よく見たら資格テキストや男性ファッション誌とかばっかりで、価値のありそうなものはなかった。そんなわけで、
「あー何もなくてよかった」
と胸をなでおろし、何事もなかったように足早に(セルフイメージ)立ち去る今朝の蕃茄山人なのであった。<今日の一句>
朝の秋 何事もなく 往きにけり
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