「獄友」と「えろぼん！」 - 国立駅前・ギャラリービブリオ連絡版(蕃茄庵日録別板）

今日は定休日。

昼から渋谷へ。行先は円山町はラブホ街に鎮座するユーロスペース地下「映画美学校試写室」。金聖雄監督作品「獄友(ごくとも)」の試写会にお招きいただいた。

金監督は「SAYAMA」「袴田巌夢の中」と権力による犯罪である冤罪問題を取り上げてきた。

今回の「獄友」はその集大成ともいえる作品で、狭山事件、袴田事件、布川事件、足利事件で犯人にでっち上げられ、青春を、半生を奪われた５人の男たちの日常を追ったドキュメントだ。

いつかちゃんと書かないといけないと思っているのだが狭山事件は15歳の秋以来、40年以上にわたって僕の人生の大きなテーマ。この映画の完成をずっと楽しみにしてきた。

試写場入り口で金監督にあいさつ。数年前に当ビブリオで東京のアイヌ問題の上映会をしてくれたことがある。そのときは「10人くらい来てくれたらスタッフと合わせてそこそこにぎやかになりますね」なんて言っていたら40人以上集まってあわてたのだ。去年の中川五郎さんと小室等さんのライブにも来てくれた。

早めに行ったので見やすい席を確保できた。

権力が自らのメンツのために無辜の民をスケープゴートにして拘束し、殺そうとする「冤罪」。その犠牲となり長い年月を檻の中で過ごすことを強いられたという共通点はありつつも、それぞれの生き方、それぞれのその過去との向き合い方をする男たち。前向きに発言する人もいれば自らにこもる人もある。それぞれに長い時間をかけて丁寧に寄り添ったのがこの映画。

権力の恐ろしさととも人間というものの強さ、友情や家族愛、夫婦愛の温かさを描いている。見ているとこの5人の男たちみんな好きになる。

彼らを包み込む四季の風景の映像も美しいし音楽もいい。趣旨に共鳴して当代一流の音楽家たちが集結した。

その名も「冤罪音楽プロジェクトイノセンス」。小室等を団長にayako_HaLo、アン・サリー、李政美、伊藤多喜雄、うじきつよし、及川恒平、大熊ワタル、こぐれみわぞう、河野'菌ちゃん’俊二、こむろゆい、坂田明、沢知恵、白崎映美、谷川賢作、趙博、トリ音、中川五郎、中川敬、橋本学、POE、＊はなおと＊、牧原正洋、吉野弘志、良元優作、四角佳子 (五十音順)

この中に当ビブリオで演奏してくれた人が予定も含めて8人いる。深いご縁を感じる。

主題歌の完成記念ライブも3月から3ヶ月連続で始まる。これ、凄いメンバー。

重いテーマで深く考えさせられるのだけど見終わったときの気持ちは上を向いている。権力の理不尽への怒りは怒りとして告発は告発として人間というもののすばらしさ、あきらめなければどんな場面からでも再生できるという希望を描いているからだと思う。

3/24、東中野・ポレポレにて公開。

終映後は思わず拍手。

監督にお願いしてたくさんのフライヤーをお預かりした。うちでも配ろう。

プロデューサーの陣内直行さんにもご挨拶したいな。実は前職で間接的にお世話になっている。前の勤務先が「制作協力」していたテレビ番組の制作会社が陣内さん率いる「アズマックス」だったのだ。「週刊ブックレビュー」っていう児玉清司会の書評番組だったんだけど覚えている人います?

と思ったら「明順応」で視界がはっきりしないうちに先方から声をかけてくださった。

そのあとは小田急で下北沢へ。

ネットカフェで仮眠をとった後は「下北トリウッド」へ。ここで現在ロードショー中の池島ゆたか監督「えろぼん!」鑑賞。

18禁のピンクではなくR15の一般映画。だけどピンクよりエロいと大評判。つまり露出は一般映画の基準をクリアしているのに演出によりピンクよりエロいという。つまり「合法ドラッグ」のような映画なのだ。これは15歳には見せたらたいへんだなぁ。

実は僕は試写会で見ているのだけど、いい映画は自腹で見たい、と劇場に見に来た。

たしかにエロいんだけど基本はハートウォーミングな人間賛歌。生きていればいいことあるよね。って人生を肯定的にとらえられる傑作。生きているのが嫌になったとき、なにをやってもうまくいかないとき(始終だよ)、ぜひ見たい映画。

そしてプラトニックだけが純愛ではないことを教えてくれる。

女優さんも男優さんも達者。第一ヒロイン一条綺美香さんの稀有な美しさ、第二ヒロイン月本愛さんの抜群のキュートさ、昭和オヤジ・竹本泰志さんの一見チョイ悪ながら純情まっすぐなかっこよさ、平成ムスコ・長与純大さんの不器用だが誠実なDTぶり。そしてなかみつせいじさんの心憎いまでのサイテーさ。エキストラで友達が何人も出ている。

こういう小予算の映画には珍しくパンフレットも作製された。もちろん購入。