　庄野潤三氏 - 国立駅前・ギャラリービブリオ連絡版(蕃茄庵日録別板）

<昔日の一葉 2 >　庄野潤三氏(1921.2.9〜2009.9.21)

1993年1月に撮影。

亡くなって10年近くが経つ現在も新しいファンが増えつつある庄野潤三氏。そのファンの方たちが「聖地」として憧れる「坂の上の家」にて撮影しました。

向ヶ丘遊園近くの庄野氏のご自宅の日当たりのいい書斎にて。

前年に勲三等瑞宝章を受章され、その時にお祝いにもらった蘭の鉢植えを大切に手入れされていました。写真の右端に映る灰色の花も蘭です。モノクロ写真だから灰色ですが実際には青い蘭(「ヴァンダ」という品種らしいです)で、小学校の同級生女子4人組から贈られたものとのことでした。この写真の対向ページはそのことを書いた「青い蘭の花」という随筆になっています。

撮影しながらずいぶんと話し込んでしまいましたが、とにかく穏やかで優しい方という印象でした。後年出版された島尾敏雄氏の「死の棘日記」に、もっとも困窮していた若き日の島尾氏を物心ともに支え続けた同人仲間・庄野氏への感謝が多く書かれていて、改めて納得しました。

撮影が終わるころ「遠くからお疲れ様でした」と夫人がサンドウィッチを作って出してくださいました。「こちらが作品に多く登場する奥様か」と感動しました。

帰り際、「写真が出来上がったら4枚送ってください」と言われ、後日、紙面に使った写真を焼き増ししてお送りしました。

冊子の発行後、しばらくしたら庄野氏から太い万年筆書きの葉書が届きました。そこには「写真をありがとうございました。冊子とともに4人組に送ったら大喜びでした」とありました。

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