磯田道史『武士の家計簿』

磯田道史武士の家計簿』(新潮社文庫・680円)

 33歳の少壮の研究者である著者が古書店加賀藩の御算用掛、すなわち経理マンの家の数十年に亘る「家計簿」を購入した所からこの本は始まる。
 さすが経理マンで細かい出納まで記録してあって、家計の出入りから江戸晩期のB級武家の実態が詳らかになる。その実態はややセコい。神坂次郎『元禄御畳奉行の日記』(中公新書)と、どこか情けない所が似ているが、こちらの方は途中で御一新があるというところがドラマチックだ。
 でも結構、淡々と仕事してるんだよな。のちに某・国民文学の主人公と関わりを持ったりするのだけど、それは読んでのお楽しみ。


武士の家計簿