朝日新聞の東京版の水曜日の夕刊に「TOKYO老舗・古町・散歩」を連載している当代きっての粋人のエッセイ。親本は2000年に出ている。
親本も持っているのだが買った。畏友・義太夫三味線の鶴沢寛也師匠へのプレゼントとして買ったのだ。だけどまた読みたくなって(新原稿もあるし)、師匠より先に読んじゃった。ごめんね、師匠。
とにかくこの著者は集めるのだ、猿のように蒐集するのだ(猿が蒐集するかどうかは知らないが)。そして蒐集したものへの愛情を照れずに語る。その臆面なさが素晴らしい。
たとえばステッキ。明治・大正の伊達男は若者もみなステッキもっていたんだなぁ。それからひょうたんとひょうたんの型のすべてのもの。そして帽子。昔(戦前)は一人前の男は帽子をかぶっていてたのだなあ。「日本人は帽子が似合わない」なんて迷信。永井荷風のかっこよさを見よ。戦後のダメオ君たちが帽子のかぶり方を忘れてしまったんだね。
西の天才・みうらじゅんは自分だけの宝物を「ボク宝」と称した。
東の天才・サカザキは"重要自分化財指定"と称す。
そう、それらのコレクションは「自分」を「自分」たらしめるものなんだな。
気がつくと旅先で「ひょうたん」を探している自分がいたりする。この著者は、親戚に一人はいる遊び人の伯父さんのようなきさくな口調で僕らをそそのかす、果てのない「道楽」の世界に・・・。
図版多数。お買い得です、800円。
寛也師匠、遅くなってごめんなさい。今日、送りました。