翻訳家・金原瑞人さん

banka-an2003-10-28


昨晩は仕事帰りに久しぶりに府中に行った。翻訳家の金原瑞人さんと待ち合わせ。
 
 ファンタジー小説ヤングアダルト文学が好きな人で金原瑞人さんを知らない人はいないと思う。『青空のむこう』『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』『ヘヴン・アイズ』『サハラに舞う羽根』『盗神伝』等々、最近のヒット作を挙げただけでも錚錚たる作品ばかりだ(公式サイトにリンク張ってます。お帰りにぜひ)。

  そもそも僕に金原さんを紹介してくれたのは、この日記にもよく登場する義太夫三味線奏者の鶴澤寛也師匠。寛也師匠と金原さんは落語家の桂文我さんつながりだ。寛也さんは芸人さんとして共演、金原さんは新作落語の作者として文我さんの会に行き、そこで意気投合したらしい。英米のファンタジーの名翻訳で知られる金原さんだが、その素顔は落語と歌舞伎が大好きな人だ。ちなみに音楽はジャズ好き。そして国立の隣町の府中にお住い。それを聞いた寛也師匠が「これは蕃茄のヤツに紹介してやったら喜びそうだ」とピンと来てくれたらしい。

「翻訳家の金原瑞人さんって知ってる?」

っていうメールが寛也師匠から来て、

「知ってるも何も師匠、人気実力ともナンバーワンの翻訳家じゃないですか? 小生、ファンでゲス」

「ケケケ、紹介してあげようか?」

「ぜひにぜひに」

というやりとりがあったのが、明けない梅雨の真っ最中。数日後、国立の「ときしらず」というオシャレ居酒屋で、3人の小宴が開かれた。

 話すうちに、先に書いた落語、歌舞伎、ジャズに加え、ともに「つげ義春」マニアであることがわかり、「メメクラゲ」だの「ガンバレチヨジ!」だの言って深夜まで盛り上がった。

  金原さんは新しい作品だけでなく、古典的名作の少年版の翻訳も多く手がけている。そこで僕は、金原さんの知遇を得たのを機に、「宝島」「さいごの一葉」だのを金原訳で楽しんでいる。「最近、故あって金原瑞人訳に凝っている」と日記に書いていたのはそういうことだ。

 今回は金原さんの地元・府中の中華風居酒屋「りんりん」で飲んだ。寛也師匠はただ今、難曲に挑戦中で無念の不参加。

 話は翻訳家のお仕事のことから始まり、この冬おそらくファンタジーの台風の目になるであろう近刊『バーティミアス』のこと(これについてはいずれゆっくり書こうと思う)、このたび見事「すばる文学賞」を受賞した娘さん(金原ひとみさん。受賞作「蛇にピアス」)のこと、落語、歌舞伎、ジャズ、はたまた「寛也師匠プロモーション計画」まで談論風発。ぎりぎり終バスに乗り込んだ。しゃべりすぎて今日はのどが痛くて、皆に「声が変だ」と言われた。

 ところでこの「りんりん」というのもとっても面白いお店。手作りの中華風お惣菜や甕から酌む紹興酒がやたら美味しくリーズナブル。ご主人は仏教雑誌「大法輪」に連載を持つ画家でもあり、店の中には作品が一杯。どれも幼子を描いたほのぼのとあたたかいもの。甕に描かれた絵も素晴らしい。料理、お酒はもちろんのこと、この絵を見るためにもまた行きたいお店だ。金原さん、素敵なお店を紹介してくださってありがとうございます。しかもご馳走になっちゃってすみません。いい年して面目ないっす。