昨日のことになるが、新宿のあとは打ち合わせで神田神保町。
僕が苦手としている町だ。何故って、地雷がたくさん埋まっているから。「本道楽」には封印をしているのだ。いくらお金と収納スペースがあったって足りるものじゃない。根がケチだから積ん読は好きじゃない。
自らの両の手を遮眼帯にして目的地に急いだ。今日の目的は「ビジネスシーンにおける孫子の兵法の活かし方」について教えを請うのだ。
お相手は若手中国文学者の守屋淳さん。読書家でネット・ユーザーなら誰でも知ってる「本のメルマガ」の主宰者でもある。
守屋さんの父上にもずいぶんお世話になっている。高名な中国文学者の守屋洋さん。企業経営者向けの中国古典の執筆・講演の第一人者だ。実は、そもそものご縁のはじまりはお父さんのほうなのだ。
20年近く前、僕はあるツアーで中国に行った。そして、行く先々で中国古典について語り合ううち添乗員氏と意気投合してしまった。さらに話すうちに、僕が守屋洋氏のファンであることと、添乗員氏がたびたび守屋氏主催の企業人中国ツアーの添乗員を務めていて親しいことがわかり、帰国したら紹介してくれる約束をしたのだ。
こういう約束と言うものは、たいてい帰国すると熱が冷めて反故になってしまうものなのだけど、この添乗員氏は立派な人で約束を果たしてくれて、守屋洋氏の自宅を訪問する僥倖に恵まれた。
それ以来親しくさせていただいていて、たびたびいろいろとお世話になっている。一緒に震災前の神戸に陳舜臣氏を訪ねたこともあった。
10年ほど前、山の上ホテルのティールームで待ち合わせをしたとき、先生の隣にいかにも清潔かつ元気そうな若者が座っていた。若き日の淳氏だ(今も若いが)。
「息子です。会社勤めをしながら翻訳の勉強をしています」
と紹介された。
それから着々とキャリアを積まれ筆一本で独立し、いまや若手の注目株だ。
そんなわけで、昨日もいろいろと役立つ話を伺え、勉強になった。
新刊「人生に・経営に・思索に活かす論語」が発売されたそうだ。早速読んでみよう。
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もうひとり、神保町に来たら会いたい人がいた。古書店「ラマ舎」を経営する長田さんだ。「ラマ」は難しい漢字があるのだけど上手く変換できないのでカタカナで通す。下の写真を参照してください。
長田さんとは10数年の付き合い。「つげつながり」だ。「つげ義春」をこよなく偏愛する集団「つげ義春研究会」での仲間だ。長年、三軒茶屋で営業していたが、去年神田(三省堂自遊時間の裏)に移ってきた。移転のお知らせはいただいていて、長田さんには会いたいのだけど、前述したように、僕は神保町が苦手なので不義理をしていたのだ。
でも守屋淳さんとの会談が実り多く、嬉しくてハイになっていたのでつい訪ねてしまった。
失敗だった。火がついちゃった。
「本道楽」はいくらお金と収納スペースがあっても足りないから封印をしていたのだけど、いざ珍しい本を見ると欲しくなっちゃう。古いマンガやサブカル本が所狭しと並んでいる。昔の児童雑誌の付録なんかもあるのだ。いとも簡単に封印を切ってしまった。とんだ梅川忠兵衛だ。
嵐山光三郎さんが「小説すばる」に持っている連載に、古本屋巡りをする企画エッセイがある。その取材で、今年の初めに嵐山氏一行がこの店にこられたと言う話を春ごろ長田さんから聞いた(美術家・山田勇男氏の個展の打ち上げでだったかな)。その時、嵐山さんはレジ横にかけられた「俳画カレンダー」を目ざとく見つけたそうだ。
「こんなレアもののカレンダー、どこの市で買ったの?」
と聞かれたので、
「友達の蕃茄という人にもらったんですよ」
と答えると、
「あいつ、こんなところにまで出入りしているのか?」
と大笑いされたと言う。出入りしてません。
その話を聞いていたのでレジ脇を見ると、確かに俳画カレンダーがかけてあった。
よく見ると11月28日のところに鉛筆で「タモリ」と書いてある。
金曜深夜の名物番組「タモリ倶楽部」に出演するそうだ。昭和のエロ風俗資料の品評会をするという企画で、ゲストはみうらじゅんと江川達也。この店で収録があったそうだ。
かなりくだらなそうだ(こういう場合の「くだらない」は最大の賛辞)。万難を排して絶対に見よう。