アンコル・トムとビッグイシュー

小田急線沿線で仕事をしていて、町田でお昼になったのでアンコル・トムに行った。カンボジア家庭料理の店だ。横浜線町田駅から徒歩一分と至近だけど境川を越えるので相模原市になる。

  10年前にも一度来たことがある。「私の親友がやってるお店があるの」とエッセイストの朴慶南さんに連れてきてもらった。その後も町田に来るたびに寄ろうかなと思いつつも定休日だったり、時間が合わなかったり、満員だったり、連れが辛いものダメだったりで果たせなかった。つまり10年越しの願いがかなったのだ。
  
  創業者のペン・セタリンさんはカンボジア出身。留学生として来日中にポルポトのクーデターで一家が離散し、そのまま日本で生活の基盤を築いた。現在は 『東南アジア文化支援プロジェクト』(CAPSEA)として戦火で荒れ果てた祖国の復興をめざして、また日本とカンボジアの架け橋として活躍されている。

  僕が本日いただいたのはバイチャー(カンボジア風チャーハン)とクォーン(生春巻き)。
  美味しかったぁー。昼間からこんないいものいただいて良いのかと自問自答したくなるほど美味しい。バイチャーはスパイシーだけど辛すぎず香り高い。生春巻きってのはあれは寿司だね。ドレッシングも「爽やか辛い」。グッド。どんどんいける。皿を重ねてお替りしたくなった。

  今度は夜の部にシンハビールメコンウィスキーを飲みながらやりたいな。

  満腹満足して小田急線に乗ったとたん爆睡。終点まで目が覚めなかった。

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  新宿に着き地上に出ると何かをアピールする男性の声。そちらを見ると、作業服姿で胸にプラカードを提げた中年男性が、手に雑誌の束をを持って呼ばわっている。

  「ビッグイシュー」の売り手だ。そうか、東京でも始まったんだ!

  最近話題になっている「ビッグイシュー」をご存知だろうか。  「ホームレスの仕事をつくり自立を支援する」がキャッチの雑誌だ。

  ビッグイシューは英国で成功し世界24か国、50地域に広がっている、ホームレスの人しか売り手になれない雑誌だ。目的はホームレスの人たちの救済(チャリティ)ではなく彼らの仕事をつくることにあるという。 具体的には、最初は一冊200円の雑誌を10冊無料で受け取り、この売上げ2,000円を元手に、以後は定価の45%(90円)で仕入れた雑誌を販売、55%(110円)を販売者の収入とするというシステムだ。

  日本ではこの秋口、大阪、神戸で始まりマスコミで大きく取り上げられた。僕が今日見たのが新宿の南口だ。東京での活動が始まったようだ。

  早速、そのお兄さんから買い求めた。はきはきと接客も小気味いい。後でわかったのだが販売員にはずいぶん厳しい行動規範があるようだ。
  お金を払うと、透明ファイルというかホルダーから半分顔を覗かせた雑誌を客に差し出し、客がその雑誌を引き出すというやりとりをする。
  説明がむずかしいな、つまりは売り子が直接雑誌に触らない、というシステムなわけだ。どうなんだろ、いくら「お清潔症候群」の時代とは言え、そんなことを気にする人は最初から買わないだろうから不要なような気もするが・・・・。あくまで私見、確信は無い。

  あと当然だけど、売り物ある以上、商品に魅力が無いといけない。で、僕は一応、雑誌はプロの読み手ということになっているんだけど(あくまで一応ね)、うん、これは結構いけてるんじゃないかな。200円の価値は十二分にある。本家との共通コンテンツのアンジェリーナ・ジョリーのインタビューも面白いし、カポイエラの紹介も面白い。独自コンテンツの中島らもインタビューも笑える(あなたが一番心配ですわ、らも先生)。
 
  これで宗教とか政治とかの背後関係があるとすごくがっかりしちゃうんだけど、見たとこはなさそう、というか少なくとも誌面にはあらわれてはいない。次号は12月4日発売。



  ところで、難しいのはこういう時の挨拶だ。
 
  「ありがとうございましたぁ!!」

  と大きな声でお礼を言われて、気持ちは「がんばってください」なんだけど、「がんばってください」ってのは最も言いにくい言葉の一つだよね。
  かと言って「がんばりましょう」ってのも「にわか社会派」みたいでテレが入る。

  やっぱり「どうも・・・」かな。