中西京子「夢かぶき人形展」(福岡三越)

 たった1泊2日の福岡行きで4日も引張ってしまって申し訳ない。くどい性格はちょっとやそっとでは直らないのでご容赦いただきたい。


  福岡で地下鉄に乗っていてふと目に入ったのが一枚の車内吊り広告

「中西京子“夢かぶき人形展”」

  狐忠信が鼓を持って飛び上がるシーンの人形が大写しで載っていた。足先まで力感がこもっている。これは歌舞伎をよく知ってる人の人形だな・・・。

えっ? これが和紙? 紙なの? ・・・・・・びっくり。

  会場は福岡の中心街。天神にある福岡三越9階の「三越ギャラリー」。ホテルのチェックインを後回しにして行って見た。


  驚いた、凄い迫力だ。かなり大きい展示場をうめつくす人形、人形、人形・・・・。

  出雲の阿国から始まって江戸歌舞伎の成立まで、年代を追って1200体の人形で繰り広げる絢爛絵巻だ。

  単に歌舞伎の扮装を凝らした人形が展示してあるというだけじゃない。いろいろ趣向がこらされているのだ。そう、趣向こそが歌舞伎のすべてだもんね。

  「義経千本桜」は下のポスターにある狐忠信のほか、大物浦の知盛、僕が大好きな「すし屋」のいがみの権太もいる。う〜ん、権ちゃんの不良の魅力をよく表している。

  「忠臣蔵」は大序から討ち入りまでも一つの場面でジオラマにしている。

  「菅原伝授手習鑑」の松王丸もいい、ほんとに死にそう。男のやつれ姿の色気が漂っている。

  圧巻は芝居小屋。琴平座をモデルに総勢500体の人形からなる大ジオラマとなっている。演目は助六。役者、観客はもちろん、裏方や表の通行人まで丁寧に配置されている。同じ人が一人としていない。地下で回り舞台を回す人や、楽屋風呂を沸かす人まで、リアルに作られている。


  これらの作品は和紙人形作家・中西京子さんとそのお弟子さんたちによるものだ。

  大きい作品は主に主宰の中西さんのもの。芝居小屋の大ジオラマなどは10人以上の作者による合作だ。多くの人で作るからそれぞれ個性が出て500人からの人形が類型的にならずにひとりひとり個性を出せているんだな。

  これは思いがけずいいものをみせてもらった。どうも全国をまわっている企画のようだ。縁があった人はぜひ見たほうがいいと思う。2月は札幌、4月は金沢とか。
  

  福岡三越では2月1日まで。木戸銭は600円。その価値は大いにある。