とらぬ狸の皮算用(阿波徳島業務日誌)

 出張で四国は徳島に来ている。今日は県内のいくつかの市町をまわった。


 県南の「阿南市」というところにも行った。


 敗戦時の陸軍大臣ではない。「あなん」と読む。


 駅などでローマ字表記すると「ANAN」、または「anan」となる。なんかちょっとかっこいいのである。パンダ、もしくはマムシみたいなのである。


 それから四国というと「狸」、らしい。空港や駅のおみやげ物売場にも狸グッズや狸をかたどったお菓子が何種類も並んでいる。狸なんて日本中にいると思うのだけど、四国は特に狸の生息数が多いのかな。



 話は前後するが、今日は朝から波乱だった。


 羽田空港の搭乗ロビーで8時50分発のJAS徳島行きの搭乗開始を待っている時、そのアナウンスがあった。


「まことにおそれいります。8時50分発のJAS徳島行きの231便はオーバーブッキングとなってお席が10名様分ほど足りなくなっております。お客様の中で10時30分発のスカイマーク便に変更可能な方はいらっしゃいませんでしょうか?」


 どうしてこういう凡ミスが起こってしまうのだろう。オンラインのコンピュータで管理しているチケットを、どうすればオーバーブッキングできるんだ。

それに「変更可能な方」って簡単に言うけど、みんな急いでいるから飛行機に乗っているのである(プンプン)。「変更可能な方」なんてそういるはずなどないのである。


「変更いただけたお客様には“変更謝礼”として1万円お支払いいたします」



 ・・・・・・まぁ人間のやることだから間違いはつきものだ。困ったときはお互い様じゃあないですか。ハッハッハッ!!


ハイ、僕、替えられます。


「ありがとうございます、お客様。ただ、もしすべてのお客様がお乗りになれたときは予定通り、この便にお乗りいただきますがよろしいですか?」


 むろんよろしいのである。現にオーバーブッキングしているものが、急に空くわけはないのである。



 約一時間半の遅れはぐらいは現地でいくらでも取り返せる、早飯早足で何とでも。


 それにしても1万円とは豪儀なものだ。


一万円の臨時収入があれば晩餐はちょっとばかり豪遊できるのである。徳島といえば皿鉢料理・・・これは高知だったな。徳島は・・・徳島ラーメン?  鳴門金時芋? あまり豪遊って感じでもないな。まぁとにかくホテルの最上階のレストランかなんかに行っちゃうのである(ホテルって言っても駅前の東急インだけど)。ああ、今日はついているなあ。


 お、みんな乗り込んでいくなあ。行き給え行き給え、忙しい諸君は。



「お客様、まことにありがとうございました。幸い皆様お乗りになれました。予定どおり当便にお乗りいただけます。ありがとうございました」


ヘナヘナヘナヘナヘナ・・・・・・。


 ああ、そうでつか。わかりました・・・・・。



 コンピューターで管理しているチケットがオーバーブッキングするのも不思議だが、一旦オーバーブッキングしたものが、また乗れるようになったというのもどういうわけなのだかまったくわからない。いったいどうなっているのだろう。
 


 そういうわけで、飛行機に乗る前から僕の運命は乱高下、羽田にいるときから、四国名物(かどうかはわからないけど)のとらぬ狸の皮算用をしてしまったのである。