市内西端の某店にて買い求めた商品に瑕疵があった。クレーム電話をしたら持ってきたら取りかえるという。「何を偉そうに」とも思ったが、こんなことで正論を振り回すのも大人気ないので自転車に乗って交換に行った。
その帰り道、国立の東西を結ぶ大通り「富士見通り」を自転車で駅方向に走っていての信号待ちで、びっくりした。
信号の向こうにいるのは藤井輝明さんだった。
『運命の顔』(草思社)という本をご存知だろうか。去年の秋に出版されてロングセラーになりつつある本。生まれつき「血管腫」という顔に痣と腫れができる難病を負ったにも拘らず、前向きに自分の力で運命を切り開いていった一人の医療人の半生記だ。
その本の著者である藤井輝明さんが目の前に、同じく自転車に乗って信号待ちをしているのだ。
僕も今年のお正月にこの本を読んでとても感動した読者の一人だ。そのレビューと本の細かい解説は1月7日の日記に書いている。
多少、恥ずかしくはあったが思い切って声をかけてみた。
藤井さん・・・
「あ、はい。こんにちは!」
藤井さんはパッと自転車を降りて気さくに答えてくれた。
著書を読んで感動したこと、幼稚園と小学校の後輩であることなどを伝えた。そう、国立にご実家がある方なのだ。しかもお会いしたのがご実家から50メートルくらいの場所だったのだから、別にお会いしても不思議はないのかもしれない。
それに対して藤井さんがおっしゃったのは、
「あの、もしかしたらホームページに書評を書いてくださいませんでしたか?」
これにはビックリした。なんとありがたいことに、この「蕃茄庵日録」をお読みいただいているのだ。僕の書いた書評(読書感想文)を読んで教えてくれた人がいるようだ(試しに「運命の顔」でググったら109番目に「蕃茄庵日録」が出てきた)。
「お礼のメールをしようと思っていたんですよ。奥様はお元気ですか?」
上のリンクボタンのリンク先の1月7日の日記に書いた、藤井さんと僕のツマの出会いのことをおっしゃっているのだ。うん、ホントに読んでおられ、内容も覚えておられる。感激。
熊本大学の教授で住まいは熊本にあるのだが、東京に用事があっての里帰り。まもなく熊本に戻られるそうだ。また、続編も構想中とのこと。
路上に自転車を止めたままの立ち話なので長くは話せなかったが、本のイメージそのままの気さくで丁寧な方だった。
偶然にお会いできてよかった。その時間にその場所を通ったおかげだ。不良品を売っておいて「交換に来い」と理不尽な物言いをした市内西端の某店に、今では感謝している。