マグナムをぶっ放せ!!

日頃の失点を埋めようと、庭で次男・三吉(仮名・小2)のキャッチボールの相手をしていたら、傍でチアガール(?)をしていた長女・花子(仮名・小5)が悲鳴を上げた。


「ハチの巣!!」

 
 指差す先を見てみると、ガレージの屋根に蜂の巣ができて何匹かの蜂が出入りしている。アシナガバチだ。


 さて、どうしたものか。町育ちの僕はこういう時の豆知識がない。傍らで畑仕事をしていた母に聞くと


「昔は竿の先に付けたボロキレに灯油を付けて燃やして(松明ですな)焼き殺したものだ」



という。でもそんなことしたらアクリル製のガレージの屋根が溶けちゃうことぐらい三吉でもわかる。


 だとしたら殺虫剤だな。


 近くの薬局に行くと専用の殺虫剤がいろいろ出ていて、それぞれのパッケージに対処法が親切に説明されている。それを総合すると、暗くなってから、長袖、長ズボンで作業すればいいらしい。作業内容は、蜂の巣に向けて一気に殺虫剤を噴射する、だ。


 数ある中から僕が選んだのがアース製薬の「ハチ、アブマグナムジェット」である。もちろん名前が気に入っての採用だ。

   なにしろ「マグナム」で「ジェット」である。ダーティー・ハリーか「ウー・ヤー・ター!」である。


ハチアブマグナムジェット 蜂駆除スプレー [550mL]

ハチアブマグナムジェット 蜂駆除スプレー [550mL]


 ハンドルを起こすとそれがグリップになってハンドガンのように噴射できる。最大射程距離10メートルとある。ガレージの屋根ぐらいなら楽勝だ。


「敵機ガ全機帰還スル夜ヲ待ッテ攻撃スベシ」


とのことなので、日暮れを待ってのオペレーションとなった。


 長袖、長ズボンとのことなので、アロハの上に赤いウィンドブレーカーを羽織り首にはタオルを巻く。下はクリーニングに出そうと玄関に置いてあった背広のズボン。軍手をはめてゴム長。頭はオートバイ用の伊製agvのヘルメット。思いきり怪しいスタイルだ。


 凄いね、流石にこのマグナムは。かなり強力な噴射だ。たしかに10メートルぐらい飛びそう。しっかりグリップがついているので標的を狙いやすい。殺虫剤にしとくのがもったいない。少なくとも護身用にはなりそうだ。第三石油類。よく燃える。


 作業はあっけないほど簡単に終わり、建設中の蜂の巣はただの褐色の物体となって地上に落ちた。こうして最新ウエポンの助けを借りてミッションはコンプリートされた。

 
 2階の窓のむこうから(もちろん窓は閉めさせていた)、花子と三吉が心配そうにこちらを見下ろしている影が見えた。頭上で大きくマルをつくると、ガラッと窓が開いて、そして拍手が起きた。


 
なお、お読みの良い子達はまねをしないように。もし、スズメバチだったら大変です。攻撃性および毒性が強いので素人の手に負えません。お住まいの市役所区役所町役場等に電話をしてください。