明日までに作らなければいけない資料がある。食事が済んだらすぐに取りかかろう。
と思いつつつけたテレビから聞こえてきたのは吉田拓郎の歌声だった。
新聞のテレビ欄を見ると、TV東京の特番で「70年代青春フォーク大全集」とのこと。10時から11時24分。
ああいかん仕事が・・と思ったがもう遅い。動けなくなってしまった。
もうひとり動けなくなった人がいた。対面式キッチンカウンターの向こうのツマだ。洗い物をする手が止まっている。
ああ早く仕事しなくちゃと思いつつも、次から次ぎへと「この曲だけは聞きたい曲」がかかる。音源は今までテレビ東京がたびたび手がけてきたフォーク特番だ。すげえコンテンツもってるなあ。
この際だから曲名もぜんぶ羅列してしまおう。
結婚しようよ(吉田拓郎)
神田川(かぐや姫)
戦争を知らない子供達(ジローズ)
赤ちょうちん(かぐや姫)
母に捧げるバラード(海援隊)
風(はしだのりひこ と シューベルツ)
旅の宿(吉田拓郎)
心もよう(井上陽水)
時代(中島みゆき)
池上線(西島三重子)
翼をください(赤い鳥)
なごり雪(イルカ)
守ってあげたい(松任谷由実)
ケンとメリー(BUZZ)
精霊流し(さだまさし)
白い冬(ふきのとう)
いちご白書をもう一度(バンバン)
妹(かぐや姫)
22歳の別れ(伊勢正三)
贈る言葉(海援隊)
春夏秋冬(泉谷しげる)
季節の中で(松山千春)
さよなら(オフコース)
虹とスニーカーの頃(チューリップ)
帰らざる日々(アリス)
今はもう誰も(アリス)
音源がレコードや全盛期のライブでなく、数年、あるいは10数年たっての特番なので、ブランクが長い人もあり、今聞くと結構下手糞だったりする。また当時感動して聞いていた歌詞が今聞くとやたらうすっぺらに感じたりすることもある。あるにはあるのだけど、そんなことどうでもいい。懐かしく、面白かったなあ。
こういう風に後ろ向きに楽しめるものが出来たというのもジジイになったメリットだな。
聞いているうちにフォークバンドを組んでいた同級生たちのことも思い出した。
中学の卒業記念に、校内にいくつかあったフォークバンドが一堂に会してのコンサートが開かれたっけ。会場は福祉会館のホール。機材の運搬はリアカーだった。まるで夜逃げである。
もちろん自主開催。卒業式なんかよりずっと盛り上がった。楽器の弾けない僕はただの観客だったが、妙に盛り上がり、というか舞い上がってしまい、福祉会館の中を自転車で走り回り叱られたりした。中坊というのは、今も昔もバカである。
などと感傷に浸っていたら、テーブルの向かい側ではツマがまた別の感傷に浸っているらしく、テレビに合わせて小さく口ずさんでいた。
もちろんキッチンシンクの洗い物はそのままである。