いそがなくたって、そこに本屋があるじゃないか
いきなり何を言い始めるのだ? と思われる方があるかもしれないが、これは本の題名である。しかも、
「今も昔もこれからも、書店は街の情報発信基地なのだ」
というサブタイトルまでついている。
著者は高津淳。現役の書店人であり謎多き覆面作家でもある。
面白かったなぁ。この本は、「編集会議」や「新文化」に書かれた痛快エッセイを一冊にまとめたもので、連載中から毎回楽しみに読んでいた(ちなみに現在も連載中)。こうして一冊にまとめて読むとより面白く読めるのがまた不思議だ。
キャッチに曰く
「あまりにも日常的な本屋的問題に熱血店長が挑む、版元・顧客入り乱れてのギャグとぼやきの奮戦記」
たしかにこのとおりの内容だ。ハチャメチャに炸裂するオヤジギャグはなかなか強烈で眩暈がすることもしばしば。だけどよく読めばこの本がそれだけの本でないことはすぐにわかる。近頃みんなが言わなくなった「まっとう」なことを「まっとう」に語っているのだ。
なおかつ熱い。書店を取り巻く大きな問題にも小さな問題にも真っ赤に燃え上がって突進していく。でもその「熱い」ことや「まっとう」なことを前面に出すことを潔しとせず、ギャグに昇華してしまう。照れがあるんだよなぁ。この辺が町っ子特有のセンスだと思う。
何年か前に「昼間のパパは光ってる」っていうフレーズが流行ったことがあったけど、この本は1人の「光ってるパパ」のライブでもあるのだな。働くってことの素晴らしさ楽しさがひしひしと伝わってくる。
覆面作家・高津淳。でも彼の正体を知っている人は多い(らしい)。ちなみに僕も知っている。何度かお会いしたこともあるが、この本そのままの人だ。
とにかくよく動き、良くしゃべり、よく笑う。ここかと思えばまたあちらと店内を飛び回り、サービス精神満点な高津さんの周囲には笑い声と笑顔が絶えることはない。
このご時勢、しんどいことも多いとは思うのだけど、どうぞこれからも周りの人に「元気」と「心地よい疲労」を与え続けて欲しいと思う。そしてますますの商売繁盛をお祈りします。
高津淳『いそがなくたって、そこに本屋があるじゃないか』
(サンブックス・1600円)
本と本屋さんを愛するすべての人にお勧めします。