続続続続「FM国立」があった

  FM国立を中心に面白おかしい日々を過ごしていた。

 でも、作用があれば必ず反作用がある。人気が集まれば「やっかみ」も集まる。あきらと僕の周りに不可解な出来事が続発するようになって来た。

  まず僕の周りに変わったことが起き始めた。

 「こちら電波監理局です」という電話がかかってきたのだ。母が出て僕にかわるとブチッと切れる。そんなことが何度かあった。母によると中学生くらいの声だったそうだ。

  僕のところにヘンな手紙が来たこともあった。「関東電波管理局」からの警告書だった。子供文字で手書きの。だいたい、「管理局」じゃなくて「監理局」だ。相当なガキの犯行だ。

  若かった(当然だ、14歳だった)僕は鼻先で笑っていたのだが、FM国立のブームを面白く思ってない人、反感を持っている人もいたのだろう。もちろん何を思われても文句は言えない。FM国立のやっていることは違法行為であり、犯罪なのだから。


  そんなある時、浅沼と二人で、あきらの家に手紙の束を持って行ったら、あきらのマンションの前に見慣れぬバンが停まっていた。中に人が乗っていて屋根には大きなアンテナが付いている。

「まさか? デンカン(関東電波監理局)?」

  僕たちは慌てて取って返し、公衆電話からあきらの家に電話をした。なかなか出なかったが10数回目のコールで、当時小学生だったあきらの弟が出てきて、

「おにいちゃんは出かけています」

と言った。そして結局、その日は放送がなかった。

  後で聞いたら関東電波監理局のクルマにはあきらも気がついていて、用心のため居留守をつかっていたそうだ。結局そのクルマは半日近くその場所でねばっていたそうだ。違法電波が発信されるのをジッと待っていたのだろう、クルマの中で弁当を食っていたらしい。

  僕の家にニセ電話をかけた人、ニセ警告書を送った人、と同一人物だとは思わないが、同じように考えた人からの通報が電波監理局にあったのだろう。

  でも彼らまたは彼を悪くは言えない。FM国立のやっていることは違法行為であり、犯罪なのだから。彼らまたは彼のやったことは「正論」だ。


  まぁそんなことが続いたこともあって、あきらももうそろそろ潮時かな?と思い始めた。

  親にも反対されたようだ。それはそうだろう、明らかな脱法行為を看過する親などありはしない。また、あきら自身、毎回の放送を中心とした生活が負担にもなってきていたと思う。

  残念ではあったが僕たちも反対できなかった。

  放送終了を発表すると、終了を惜しむ手紙や存続を望む手紙はかなりたくさん来た。でもあきらの決心は固かった。


  初夏のある金曜日の夜が最終放送日と決まった。

  そしてリスナーみんなの投票で、ラスト・ナンバーは「いとしのレイラ」に決まった。

    《続きはまた明日。こんどこそ本当の最終回?!》