あっ! 関川さん!!

banka-an2004-07-27


ついさっきのことであるが、夜更けの神楽坂をチンタラ歩いていたら、向こうからオレンジ色のシャツを着た厚みのある人が歩いてきた。

  作家の関川夏央さんだった。

  「あっ! 関川さん、お久し振りです」

  関川さんもすぐに僕のことを思い出してくれたようだ。


  関川夏央さんは明治文学、アジア問題、中年シングル生活など広いジャンルの作品、発言で知られるノンフィクション作家だ。いわゆる「団塊世代ライター」の代表格ともいえる。

  僕の関川歴は結構長いぞ。1980年代初頭、劇画の原作を書いておられる頃からのファンだ。

  その後の「ソウルの練習問題」「海峡を越えたホームラン」「貧民夜想会」「東京から来たナグネ」などの活字作品も夢中になって読んだ。影響されてソウルに旅行に行ったこともあった(単純)。80年代半ばのことだ。


  初めてお会いしたのも、そう神楽坂だった。もう15年以上前になろうか。自分が黒いウールのコートを着ていたのを覚えているので真冬だったのだろう。宴席を終えての深夜だった。

  やはり今夜と同じように向こうからやってくる厚みのある革ジャンを着た人に気づいたのだった。

  「あの、失礼ですが関川夏央さんでいらっしゃいますよね」

  「ええ、そうですけど・・・・」

  「僕、ファンなんです。本、いつも読んでます」

  「ありがとうございます。僕、読者の方に声かけられたの初めてです」

   それが本当だとすると、僕は今や大御所の一人である関川夏央に声をかけた最初の読者ということになる。

   名刺交換して「あなたはマンガなんて読みますか」と聞かれ「はい」と答えると、数日後、出たばかりの「『坊ちゃん』の時代」(絵・谷口ジロー)を送ってくれた。

   それ以来会う機会は決して多くはないのだけど、毎年年賀状の交換は続いている(関川さんの年賀状は毎年面白い。関川さんの似顔絵と干支の動物と合わせたもの。南伸坊さんデザイン!)。

  そして今夜もそれこそ6,7年ぶりだったと思う。

路上だったので手短に近況を報告して別れ際、

  「そういえば、前もここでお会いしたんでしたよネ」

  と関川さん。

  はい、そうです。覚えていただいて光栄です。