昨日はフォーク関連小説をご紹介したが、今宵はパンク関連小説を。
大槻ケンヂ著『ロッキン・ホース・バレリーナ』。「ダ・ヴィンチ」に連載されていた小説の待望の単行本化だ。キャッチ・コピーは、
「18歳で夏でバカ!」
いいなぁ。当「蕃茄庵日録」のお客様はほとんどが、というか全員が19歳以上だと思うので(中にはダブル・スコア、トリプル・スコアの方もおられるだろう)。皆さんご自分の18歳の夏を思い出していただきたい・・・・・・・。・・・・・バカだったでしょ? この18歳でバカなところが実に愉快に、かついとおしく描かれている小説なのだ。
東京から博多に向かう初ツアーに出た駆け出しのパンクバンド、1人はツアーの先々で女の子を食っちゃうことだけを考えているヤリヤリ小僧(こいつが主人公)、あとの二人が格闘技好きのアーパーとアル中少年。みんな18歳でバカ。そしてコイツラを束ねるマネージャーが「KISS命(バンドのね)」の中年オヤジ。
そんな彼らがサービス・エリアの暗闇で拾ってしまった、強烈なゴスロリ娘。顔中ピアスだらけ、体中タトゥーだらけ、大酒は飲む、ケンカはする・・・。そんなやつらがそれぞれ思惑と秘密を抱えつつ最終目的の聖地・博多を目指す・・・。
ロード・ムービーのような小説だ。テンポがよくて実に面白い。387ページだからなかなかのボリュームなんだけど、あっという間に読めてしまった。
ところでタイトルの「ロッキン・ホース・バレリーナ」って意味わかりますか?
僕はもちろん知らなかったのだけど「ロッキン・ホース」っていうのはゴスロリ関係の方々が愛用するブランド名だそうだ。それで「ロッキン・ホース・バレリーナ」っていうのは厚底のポックリみたいな靴で・・・・。絵を見てもらったほうがいいな、下の銀ボタンをクリックしてみてください。
「靴」っていうより「沓」って感じだよね。おじゃる丸とかが履きそう。でも8万9万するんだって。高ぇ!!
ちなみに「ゴスロリ」は「ゴシック・ロリータ」の略語で表紙画像のようなスタイル。夜遅く高円寺南口を歩いているとこういう人に出くわすことがある。まぁなんて申しましょうか、お若い方の服装というのは顰蹙買ってナンボでございますのでねぇ。
というわけで、小説のタイトルからして初見の言葉だったのだが、ほかにも専門用語がバンバンでてくる。僕などはロック少年だった時期もないものだから門外漢もいいとこなんだけど、わからないはわからないなりに楽しめた。一箇所だけ行ったことあるライブハウスが出てきたし(大阪・心斎橋・ミューズホール。某・ラテンバンドを聴きに行った。となりで跳ねているおばさんを見たらハイヒール・モモコだった)。
どのキャラクターも魅力がある小説だ。でもやはりオヤジ同士ということで中年マネージャーの得山の屈託に特に心惹かれるなあ。いやオヤジ同士とは言っても得山の設定は38歳。僕からみたら完全に青年なのだが。
ネタバレするから詳しくは書かないけど、最後の方で得山が一気に弾けるシーンがある。まるで夢のようなシーン。まるで「ベニスに死す」のラストのよう。ロックが弾けながらも甘美な死の囁きが感じられる。
やっぱり、ロード・ムービーっていうのは好きだなぁ(ムービーじゃないけど)。旅をしながら若者が成長していく姿は気持ちがいい。続編も構想中らしい。今度は北に向かうそうだ。楽しみだ、ぜひ読みたいと思う。
あと、ロード・ムービーについてあと一言二言、語り倒したいんだけど長くなったし、夜も遅い。また明日にしよう。
大槻ケンヂ著『ロッキン・ホース・バレリーナ』(メディアファクトリー・1365円)