ハコスカとジロー

昨日、予告したように、一昨日の続きで田宮二郎の話だ。

 僕は田宮二郎に関して子どもの頃からずーっと思っていたことがある。ほとんど他人に言ったことがない。


 日産の名車でスカイラインというのがある。小島三児ではない。そのスカイラインの昭和44年から47年ごろのバージョンで、通称「箱スカ」と呼ばれるシリーズがある。「箱型のスカイライン」ぐらいの意味だろうか。

 
 で、ここで田宮二郎の話に戻るのだけど、僕は子どもの頃、田宮二郎スカイラインが似て見えて仕方なかったのだ。フロントランプを目として見ると、その両目をつなぐフロントグリルのグッと絞ってシェイプされたフォルムが、田宮二郎の苦みばしった眉間の皺に見えたのだ。

 母に言っても、母は自動車のフロントマスクを人間に譬えると、フロントランプを鼻の穴と見てしまう人だから通じるはずもなかった。フロントランプが鼻の穴ならばこの世にカッコイイ車はないと断言してもいい。

 今でも時々、マニアの人が箱スカのGTRとかに乗っているのを見かけることがある。そんな時でも僕は、

「あ、田宮二郎だ・・・・」

とつぶやいてしまう。