お宝の折りたたみ傘

昨晩は羽目をはずしすぎた。

今日がつらい。目が開かず朝食が食えず昼食も食えない。舌がもつれる。まっすぐ歩けない。

でも昼休みに爆睡し、午後になったらだんだん元気になってきた。

自分では違うと思っているのだが、まるでだらしのないサラリーマンが深酒の翌日に数時間〜半日かかるあの、口に出すのも憚れるあの症状と同じなので外聞が悪い。


元気になる前の午前中、電話が鳴った。昨日のパーティーで一緒だった某社敏腕編集長のダン吉兄ぃ(仮名・40歳くらい)だった。

「蕃茄さん、夕べ左々舎に傘、忘れたでしょ」

いいえ、差して帰りましたよ。

「あれ、じゃ誰のかな。お開きになったあと、蕃茄さんが座っていたあたりにあったんだけど。黒の折りたたみ傘。蕃茄さんのかと思って預かったんですよ。」

あ、それ多分、山本容子さんですよ。僕の隣りに座っておられたもの。そういえば、神田明神でタクシーを降りたときに傘を車内に忘れて運転手さんに教えてもらってましたけど、その傘は確かに黒の折りたたみでしたし。

山本容子さんの傘ですか・・・。それはちょっとしたお宝ですね」

ヤフオクに出さないでね、ダン吉兄ぃ。

でも、二日酔いが醒めた(あ、言っちゃった)冴えた頭(といっても知れてるが)で今考えてみると、「容子さんの傘」説の信憑性は薄いなあ。だって、そもそも黒い折りたたみ傘なんて珍しくないし、ダン吉兄ぃが「蕃茄の?」と思ったくらいだから男物だろうし。

それはともかく雨降りの中、傘を忘れて帰るというのも珍しい。あ、そうか、ダン吉兄ぃが「蕃茄の?」と思った根拠はその辺かも知れないな。