「はじめました」で季節を知る

神田明神下に「左々舎(ささや)」という結構なお店がある。ふく(河豚)料理が売り物の割烹料理店だ。芸者の検番の建物を改造した拵えで、山口瞳先生がこよなく愛した店としてもよく知られている。

僕も大好きな店だ。大好きな店だが、決して安い店ではないので、行くときはかなり気合が入る。

季節季節に葉書を下さる。秋には「ふく始めました」。春には「鱧、始めました」。

葉書にはご贔屓の文化人の俳画が添えられている。先日いただいた「ふく始めました 秋彼岸」の葉書には随筆家の坂崎重盛さんの俳画が添えられていた。曰く、

「町猫の背あたたかき秋日和

いいですねぇ。「始めました」の葉書や貼り紙で季節を知るなんて、とても楽しく豊かだと思う。

なんてことを考えながら残暑しつこい国立の駅に降り立ったら、微妙な貼り紙が目に飛び込んできた。駅前のスポーツクラブのもの。

「空手 はじめました!」

えーっと・・・・・、空手の季語ってなんだっけ?