越南点描〈9〉 ベトナムの木魚

ベトナムの下駄も賑やかだが、ベトナムの木魚も賑やかである。


11月15日の現地更新の日記にも書いたが、ベトナムの古都・フエにて木魚を買った。なせ買ったかと言うと、同行の美術に目の利く方が買っていたので僕も便乗したと言うのが最大のきっかけ。


それともうひとつは目の前に女流義太夫随一の麗人・鶴澤寛也師匠の顔が浮かんだから。


もうかれこれ二年前のことでこの日記にも書いたことではあるが、ある日、鶴澤寛也師匠からメールが来た。


「まさか、木魚、持ってないよね? 八重洲座で使いたいんだけど、持ってたら貸して」


八重洲座なる定期公演に『東海道中膝栗毛〜赤坂並木より古寺まで〜』をかける際に、僧侶に化けた狐に弥次喜多が化かされる場面で使うとのことだった。


普通、木魚を持っているサラリーマンなどいない。その旨を返信したらすぐさま返信が来た。


「あなたなら宴会グッズとかで持ってないかなあって・・・」


宴会グッズで木魚なんて俺はどういう人格だよと憤慨したんだが、よく考えたら持っていたんだね、これが。ずっと以前に秩父のお札所巡りをしたときに買った。なぜ、そんなものを買ったかと言うと、カラオケの時にマラカスよりも盛り上がると思って・・・・、ってそういうのを宴会グッズっていうんだよね、失敬。


ただ木魚と呼ぶにはあまりに小さい小さいやつでカンカンと甲高い音、拍子木のような音で「あなたのお名前なんてぇーの?」って踊りたくなる。



まぁ結局、師匠のお役には立てなかったのだが、今度は大丈夫。ちゃんと木魚らしい音もでる。買ってすぐ現地から師匠にメールを打った。


「木魚買ったぜぃ」


すぐに返事が来た、「ベトナムの木魚ねぇ・・・・」。


ご心配には及ばない。すぐにいい音させてどこまでも飛んでいく、よ。ポクポク。


残念ながら再演の予定はしばらく無いらしい。そこで食事の準備が出来たことを知らせる合図の「木鐸」として使うことを思いついた。なんか高原のペンションみたいでしょ。でも次男・三吉(仮名・小6)がやけこの木魚が気に入って始終叩いているので、どれが本当の食事の合図かわからない。誤報続出にその試みは中止となった。


現在我が家はツレのカンカンいうゲタの足音と、三吉のポクポクいう木魚の音で、終日賑やかである。


・・・・・うん、うるさい、とも言う。いかんいかん、こんなこと言うとバチが当たるかな。

どっちの!?!?