塩見鮮一郎著『古井戸の骸骨』

今、塩見鮮一郎著『古井戸の骸骨』(河出書房新社)を読んでいる。いったいこれはなんなのだろう。不思議な作品だ。

古井戸の骸骨

ミステリーの範疇に入るんだろうな、きっと。

「久が原のお屋敷を建てなおす過程で、空井戸から二体の謎の白骨が現れた。焼け跡、高度成長、二十一世紀。時代を越えた、三つの殺人事件をつなぐ愛憎とは。」

という惹句。時制も人称も振幅が大きな不思議な作品で、陰惨な場面も多いのだけど妙な都会的な「軽み」もあり、ユーモラス。 独特の美文に彩られている。ちょっと(ちょっと、ね)、中井英夫『虚無への供物』を思い出させるのは、主人公が高等遊民だからという理由だけではないと思う。

ミステリーの出来としてはどうなんだろ。ミステリー読みじゃない僕には判断できない。


で、不思議なのがこの著者、塩見鮮一郎。これまで、浅草弾左衛門や車善七など非抑圧民の姿をクローズアップするノンフィクション、フィクションを書いてきた人だ。斯界の第一人者と行っても過言でもない。僕も自分の中の持ちテーマなので結構読んでいるほうだ。


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それがなぜ、畑違いのミステリーを? しかもこの作品、横溝賞落選作だという。なぜ応募する? だってもうすでに偉いんだよ!


で、思い出すのはマイクですよ。


映画評論家として功なり名を遂げながらも、自らの魂の中に滾るものを抑えられずに(それまでの功績をゼロにもしかねない)あの「シベ超」を撮ったマイク水野=水野晴郎にも似た破天荒な心意気を感じるじゃあないの。


なんか、凄い人だなぁ。 さ、続き読も、続き読も。