帰宅支援マップ 

明日のために その⑦ 『満洲鉄道まぼろし旅行』(川村湊・ネスコ・1,995円)
満洲鉄道まぼろし旅行

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最近、買って気に入っている本がこれである。『震災時帰宅支援マップ 多摩・城西方面版』

震災時帰宅支援マップ 多摩・城西方面版

近い将来起きるであろう東京地震。その際に、僕などがいわゆる「帰宅難民」になるのは目に見えている。それを防ぐための地図である。

主要道路の通りにくさ及び通りやすさを評価して色分けし、「ブロック塀危険」「自販機危険」とか「道路段差の可能性」などと注意を促している。また、ライフラインとなる広域避難場所、コンビニ、避難場所、公衆トイレなども明示されている。たいへんな優れものである。

地図の質を確かめるのには、自宅周辺をはじめとする熟知した場所を見るのがいいという。早速、国立周辺を見てみた。ふむふむちゃんと広域避難場所が示されているぞ。甲州街道をまっすぐ北上した「保谷第三公園」・・・。

ありゃ、「谷保第三公園」が「保谷第三公園」になっちゃってる。ま、ご愛嬌ご愛嬌。それに谷保と間違えて保谷までいっちゃうような人は、地震があろうが隕石が降ろうが富士山が噴火しようが怪我一つしないだろうからきっと大丈夫だ。

ところで、今「近い将来起きるであろう東京地震」と書いた。でも、目に見えないものに対して楽観的な僕は「近い将来起きるであろう」なんて思っていない、実は。実用としてではなく娯楽としてこの地図を楽しんでいる。つらつらと眺め「なるほどこうやって帰ればいいのか。いや、このルートは寸断される可能性が強いな、むしろこっちのルートのほうが“急がば回れ”だ」てな具合。

こういうの、なんていうんだっけ。ロッキンチェア・ディテクティブじゃなくて・・・・。そう「机上旅行」。

でもそうこうするうちに、芭蕉先達ではないけれど、「取もの手につかず」という状態になってくるのである。「もゝ引の破をつゞり、笠の緒付かえて、三里に灸すゆるより、松島の月先心にかゝりて」なのである。困ったものである。


先日、職場でこの地図の話になった。結構皆、買ったようだ。

「俺も買ったよ。毎晩うちで眺めて楽しんでいる」

と言ったら、「カバンに入れて持ち歩かなければ意味が無い。せめて職場においとくとか」とあきれられてしまった。

なるほど、一理ある。でもやっぱり気になるのは「一理」より「三里(の灸)」なのである。やっぱり困ったものである。