今回は、調布でリタイアした前回のリベンジである。万全の態勢で臨もう。
三吉の足元をみてギョッとした。
「なんじゃあ、それは？！」
前回は、途中から足が痛くなってのリタイアだった。だから、「履きなれたものを履いて来い」と言いおいていた。
いくら履きなれているからって、ウレタンのフロートサンダルを履いてくるやつがあるかい。フロートサンダルとは、エスカレーターに巻き込まれて問題になったあれだ。
これで３０数キロ歩くのかと思うとゾッとするが、まあ仕方ない。もう靴屋が開いている時間じゃない。
２２時１０分
雨上がりの東京駅八重洲口を出て、日本橋に行き、道路元標を踏んでから出発。途中までは国道１号線に沿っていく。
今回は、「１時間歩いたら７分休憩」のペースで、しっかり休憩を入れることとする。それが長く歩くコツと聞いたから。今や邪魔者の長傘はピッケルと思おう。
２３時１０分
皇居沿いを歩き、三宅坂まで来たところで休憩。東京ＦＭ前の花壇に腰掛けて休む。（日本橋から3.9キロ）
２３時２０分
出発。麹町３丁目のファミリーマートでジャガリコを買う。１４５円。（日本橋から4.4キロ）
２３時５５分
四ッ谷駅を通り越す。「しんみち通り」あたりにはよっぱらいも多い。
さらに進んだ四谷３丁目。話題のサン･ミュージックのビルもさすがに人の気配は無い。
（日本橋から6.2キロ）
〇時５分
本来の甲州街道の起点、大木戸のファミリーマートでお茶を買う。２本で３３６円。前回の休憩からちょうど１時間たっていたので２度目の休憩。隣のビルの花壇に腰をかける。（日本橋から6.7キロ）
携帯のワンセグで、タモリ倶楽部を見ながら進む。大橋ジャンクションの威容に驚く。この空中楼閣の場所にはかつて「北冬書房」があって、幾多の名作が生まれている。
０時３７分。
新宿の南口を通過したのは０時３７分。豊田行き終電は０時４１分。早くも疲れきっている三吉を見て心は揺れるがそのまま通過。さすが日本一の不夜城、まるで昼間のように人がたくさんいる。
「帰れない二人」もたくさんいる。僕らもある意味、「帰れないふたり」たけど。
駅の近くに「遼辺餃子店」を発見。瀋陽で行った店の東京分店だ。（日本橋から8.1キロ）
１時１０分
ここから暫くは高速道路の下を歩く。
初台まで来ると、通行人はもうほとんどいない。でも「帰れない二人」はときどきいる。
三吉がしきりに「眠い」と訴える。それはそうだろう、寝てないのだから。先ほどの休憩から１時間たったのでちょっと長めの休憩。公園のベンチで仮眠。近頃のベンチは寝られないように意地悪なデザインが為されているが、三吉はまだ体が小さいので寝られる。
僕は当然、不寝番。１５分間の仮眠。真夜中だというのに、セミがうるさい。（日本橋から9.8キロ）
１時５０分
笹塚を通過。甲州街道には１キロごとに「日本橋から○○キロ」の標識が立つ。笹塚に「日本橋から１１キロ」の標識があった。国立までは３０キロ以上。こんなに疲れているのにまだ三分の一程度。「そんなはずはない！！」、と三吉激怒。（日本橋から11キロ）
２時３０分
夕食はしっかり食べているが、動いていると夜中でも腹が減る。「すき家」を見かけた三吉は牛丼を食べたいという。でも僕はラーメンが食べたい。深夜タクシーが集まるようなラーメン屋でもないものか。あいにくそういうものは国道沿いには無かった。仕方なく、明大前の「なか卯」へ行った。三吉は牛丼、僕はカレーうどん。３９０円と４９０円で８８０円。（日本橋から13.2キロ）
その後もひたすら歩く。三吉の疲れもかなり目立ち始めた。１時間に一度の休憩が３０分に一度になってきた。会話も無い。暗い国道をひたすら歩く。上北沢からは高速道路と別れ、一気に視界が開ける。が、夜中なので違いは無い。（日本橋から15.5キロ）
４時２０分
千歳烏山あたりから、背後の空。つまり東の空が明るくなってきた。夜明けが近い。月は西の空でまだ煌々と輝いている。もうすこし見晴らしのいいところなら、月と太陽を同時に見る「飛雄馬の解脱」を体感できるのだが残念。（日本橋から17.9キロ）
４時３０分
仙川を渡った。世田谷区を抜け、調布市に入った。調布市の隣は府中市。府中市の隣は国立市である。でも僕は知っている。ここからが結構長い。調布市も府中市も凄く大きいのだ。
これまでは、初台、笹塚、明大前、高井戸とめまぐるしく地名が変わり、そのつど気分も変わった。ここからは、どこまで行っても調布、こんなに歩いたのに府中、なのだ（日本橋から19.9キロ）
（ つ づ く ）
<出費明細>
ジャガリコ １４５円
お茶 ３３６円
夜食 ８８０円
（合計 1361円、累計３，２３２円）
