《11月29日の旅日記から》
美山の朝は早い。
かどうかはわからない。7時過ぎまでぐっすり眠ってしまった。睡眠はたっぷり。すっきり起きられた。気持ちよく飲んだので二日酔いにもならない。
まずは朝風呂。肩までゆっくり温泉に浸かりながら、夢のような一夜を反芻する。でも夢じゃない。さっき枕元にしっかりあった、鹿の角が。
朝風呂に入ると腹が減る。太陽を見上げるとくしゃみが出るように、朝風呂に入ると腹が減る。不思議だ。
朝食は本館の食堂ホールへ。
ご飯、味噌汁、鮭、海苔、卵、漬物、梅干、和え物の、和風旅館の正しい朝食。飾り気はないが美味しい。おひつのご飯を2杯もおかわりしてしまった。朝ビールといきたいが、ぐっと我慢。
食堂ホールでは写真展。常設かどうかはわからない。地元出身の写真家・玉置光美さんの写真展。この愛徳荘の近くの上阿田木(かみあたぎ)神社の春祭りを撮ったもの。
これが見ごたえがあってねぇ。このお祭りは面白いなあ。僕は若いころ、全国の民俗芸能見て歩いたので「目はある」つもりなんだけど、これは珍しいんじゃないかな。
「ヤツハチの舞」ってのがあってね。幼い少年二人が踊る、つまり稚児舞なんだけど、なぜか「ヤツハチ」という。「八八」という字を当てることもあるようだ。
このほかに「稚子の舞」もあるようだ。「稚児」じゃなくて「稚子」、さらには「獅子」の意らしい。
獅子舞というと勇ましいものと相場が決まっているけど、これはちょっと異なっている。写真で見る限り「調伏された獅子」という感じ。うーーん詳しいことを知りたいなあ。興味ありあり。こういうの大好き。本物を見たいなぁ。
そんなわけで、写真展はかなり真剣にじっくり見てしまった。ここまで腰をすえてみる観光客も珍しいと思う。視線が温かく(僕のじゃなくて写真家の)、なおかつダイナミックな躍動感があり、とてもいい写真だった。
来た時は気づかなかったけど食堂入り口には、上阿田木神社の縁起書がパネルとなっていた。それによるとかつては「愛徳」で「あたぎ」と読んだらしい。このへんもちゃんと聞きたいなぁ。ああ、なんて勉強熱心な観光客なんだ、今朝の俺。
食事がおわったあとは部屋に戻り、テレビを見ながら荷造り。
9時にKさんの奥さんが迎えにきてくれる予定。とりあえずノド飴をなめて発声練習。なぜ?
(つづきは近日中に)
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