ごめんね、ミナちゃん・・・

夕方、市内西部の住宅街を散歩。母校(国立2小)周辺。

今はまったくの住宅街だが、かつてはちょっとした商店街だった。同級生のタカハシ君の家とミナミ君の家はほぼ隣でともに自営業だった。何屋さんだっけかなぁ。


あれ、こんなところに洒落た店があるぞ。英国風アンティークが陳列してあって、女性客がそこそこ入っている。


屋号は入口のガラスに「ミナミ」とある。ミナミ君ちかぁ。でもアンティークショップじゃなかったはず。っていうか昭和40年代の国立にアンティークショップが成立していたわけがない。商売替えしたのか・・・。


覗き込んでいたら、奥にいた店主らしき中年の男性が顔をこちらに向けた。ミナちゃん(ミナミ君の愛称)か・・。


別に隠れる必要は無いんだけど、人と会うのが苦手な僕がとりあえず隠れる場所を探していたら、店主は店を出てこちらに歩いてきて、顔をクシャクシャにして笑った。あ、やっぱりミナちゃんのあの笑いだ。そして


「よおっ、蕃ちゃん!!」


声をかけてきた。えっわかるの?


「わかるよぉ。蕃ちゃん、全然顔かわってないじゃん」

いやいや・・・。


「久しぶり。もう35年くらい? せっかくだから、お茶しようよ?」


いいけど、このへんにお茶飲むとこなんかある?


「あるよ。ほら、そこ」


シャッターが閉まった倉庫とも店舗ともつかない建物があった。ミナちゃんは慣れた手つきでシャッターをあけると、中に向かって「おばちゃーん」と声をかけた。


「ここさ、蕎麦屋なんだよ。昼間は休んで夜だけやってるの。ちょっと早めに始めてもらうよ」


なるほど、中は結構こぎれいで、蕎麦屋というよりカフェみたいだ。


ミナちゃんは昔と変らぬ笑顔でこれまでのことを話してくれた。大学を出たあと就職して10年間サラリーマンをやったんだけど、退職して、オヤジさんの魚屋をついで(あ、魚屋さんだっけ)、でも近くに大きなスーパーが出来てから経営不振となって、5年前から今の店に業態転換したそうだ。


商売の苦労や家族の話をニコニコと話してくれるミナちゃん。


でも、だんだん聞こえにくくなってきた。忙しなく動くミナちゃんの口は見えてるんだけど、ミナちゃんの声が聞こえなくなってきたのだ。


そして・・・。このあたりから僕は、これが現実でないことに気づき始めてきた。



ミナちゃんは中学生のときに死んでいる。僕にとって初めての同級生の死だった。後から知ったのでお葬式も行けなかった。


そう、これは夢だ。絶対、夢だ。


やがて、テーブルの向かいに座るミナちゃんの姿がかすれて見えなくなってきた。笑顔の残像だけを残してプツンと消えた。昔のモノクロテレビを消したときみたいに・・・。



ミナちゃん!!!


僕は思わず叫んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しばらくは寝床の中で呆然としていた。


ごめんね、ミナちゃん。


夢の中ではミナちゃんは中学生のときに死んだことになっていたけど、実は死んでなんかいない。


この段階で本当に目が覚めた。


ミナちゃんは、ミお父さんの職業(大工さん)は継がずにサラリーマンになっている。奥さんも子どももいて、ツレがPTAでご一緒している(僕自身が30数年会ってないのは事実だけど)。



ごめんね、ミナちゃん。夢の中とはいえ死なしちゃって。




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