工事中の不思議


中央線の某駅周辺で野暮用を済ますうちにすっかり遅くなってしまった。もう夕食時。野暮用を中断、食事にしよう。


ちょうど駅前から続くアーケード街にお気に入りの某チェーン店があって暖簾をくぐりかけたんだけど、ここはオーダー方法が面倒くさい。それに駅前広場に沿いにもっとお気に入りの某チェーン店があることを思い出した。そうだ、やっぱりあそこにしよう。


あれ、薄暗いぞ。自動ドアには「節電中にてご迷惑をおかけします」と貼紙がしてある。


作動してない重たい自動ドアをやっとの思いで開ける。僕のような身体の人間にはこういうなんでもない作業がなかなかに応える。


中に人気はない。ニンキではない、ヒトケだ。すると奥から小太りの男性がズボンをチャックを閉めながら出てきて、


「すみません、今、工事中なんです」


と。


工事中? 職人さんの一人もいないし工具のひとつもないぞ。


それにそんなこと表に書いてありましたっけ? 節電中にてご迷惑をおかけします、とは貼紙がしてあったけど・・・。


「ええ、ですからわたしがこうやって立って説明しているんです」


と胸を張るが、立ってない。店の奥で背を丸めて手はズボンのファスナーにかかったままである。


うーん、このドアを手で開けるのもしんどいので外に貼紙をしてほしいんですよ、工事中なら工事中で(明らかに工事はしてないけど)。


「はい、もちろんですとも」


とさらに胸を張ったが、相変わらず店の奥で背を丸めたまま手はズボンのファスナーにかかっている。こわれたか?


腹は減ったがしかたない、夕食はやめて野暮用再開。


30分後、また駅前を通ったので「貼紙してないだろうな」と思って店を見たら、期待通り貼紙はしていなかった。


こうなると何の工事していたかが気にかかる。


ファスナー締めながらだけに「水道工事」か?<今日の1句>


真夏日の 夕餉は闇に 隠れけり


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