「山下勇三さしえ展」(HBギャラリー)


そうそう一昨日の日記の結びに「このポストの写真を撮っていた僕は衝撃を受け思わずこぶしを振り上げたのだが、その件はまた明日に続こう。」と書いた。それなのにいろいろあって昨日、書かなかった。今日もいろいろあって書かない。明日ね。



昼前、表参道をぶらぶら歩き。ラフォーレ前で総選挙をやっていた。もちろんAKBでもないし菅直人でもない。お揃いの服の5人のイケメン男性がそれぞれに大声で「私に投票してください」と呼ばわっている。スタッフに促されて投票している通行人もいる。


果たして「俺の空」映画化(ドラマ化かも)の主演決定総選挙だそうであった。違うなぁ、それぞれいい男だけど線、細すぎ。「最高裁判所裁判官 国民審査」みたく全員に×をつけたかったが、先を急ごう。


昨日から始まった「山下勇三さしえ展」。山下勇三さんが亡くなって三年。残された大小の「要返却」の封筒の数々の中に眠っていた児童書、小説、エッセイに添えられた「さしえ」たちからセレクトして展示する展覧会だ。原宿・表参道のHBギャラリーにて。


実は先週も山下以登個展「キップル雑食系」でこのギャラリーに来ている。山下以登さんは山下勇三さんのお嬢さんである。僕は10年以上前に青山のピンポイントギャラリーでのグループ展以来、以登さんのファンなのだけど、さらにそれよりずっと前、「話の特集」を購読するいやな中学生だった僕は山下勇三さんの洒脱なイラストが好きだった。で、後から父娘と聞いてびっくりしたのである。


そして今回の「山下勇三さしえ展」。井上ひさしさんや小沢昭一さんの小説やエッセイなどに添えられた「さしえ」100点近くが展示されている。僕は往時(昭和47,8年)、永六輔さんと山下勇三さんの名コンビによる『みだらまんだら』が大好きで(いやな中学生だね)、もしやその原画もと思ったがそれはなかった。でもたくさんのさしえは見応えがあり楽しかった。洒脱だなぁ。


あと特筆すべきが同ギャラリーで販売されていた小冊子「旅仕たく」。山下さんのポストカードが付録でついている。錦絵を付録でつけた明治時代の文学書みたい。



内容は俳句と挿絵で、俳句が今困 (こんこん)さしえが山下勇三。そして今困は山下さんの俳号。つまり山下さんの俳画集(私家版!!)なのだ。一ヶ月3句で一年を巡って一冊としている。


俳画と言うのは「つきすぎ」てはいけない、という。たとえば今の季節だったら、紫陽花のボタニカル・アート (メモリアル・アートではない) に紫陽花の句を賛で添えるのは愚とされている。同じ世界を連想させつつ微妙にずらすのを良しとするのだ。


その点この本はいいよ。たとえば今の季節である6月下旬の句。


「蛍満つ 闇濃密に 吉野ヶ里


これに思わず蛍のイラストを描きたくなっちゃう所だけど、「闇濃密」を拾って、夜の田園で逢引するアヴェックの絵を添える。粋だなぁ。



と思ったら違った。この本は山下さんが遺した俳句の数々と山下さんが遺した数々の「さしえ」を巧みに組み合わせて、この展覧会に向けて作ったものと言う。編者は同ギャラリー代表でデザイナーの唐仁原教久さん。


と本だけでもステキなのに、付録のポストカードは4種類。僕は「透明人間」を選んだ。これでたったの1200円。これは「買い」でしょう。



そして一昨日の「僕は衝撃を受け思わずこぶしを振り上げたのだが、その件はまた明日に続こう。」の件、これは本当にこんどこそ明日ね。



山下勇三「さしえ」展 6/24〜6/29
会場 HBギャラリー 東京都渋谷区神宮前4-5-4
原宿エノモトビル1F (地下鉄表参道駅 A2出口)
TEL. 03-5474-2325
11:00〜19:00(最終日は17:00終了)



<今日の二句>
  

猛暑日に 先哲の影 仰ぎけり


青山や 頁を渡る 風涼し


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