「朗読会・内田百間のお伽噺集より」(朗読・山下智子)

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(昨日の続き)

駒場の「万力のある家」からバスに乗って行った先は経堂である。


国史上最大の社長といわれたGEのジャック・ウェルチをして「わが町」と言わしめた町である。



ジャック・ウェルチわが経堂



わが経営


あ、違った。それは「わが経営」か。



とにかく経堂だ。大叔父で書家の故・宇野雪村の住んでいた町。何度か来ている。


文房古玩事典



今回の目的は朗読会。


語るは女優の山下智子さん。普段は京言葉での「源氏物語」の女房語りの朗読会などを主催されている。


そんな似合わないところになぜ蕃茄山人が、という疑問は誰よりも僕自身が抱くのだが・・・。


僕は源氏をほとんど知らない。特殊な教育を受けてしまったので。


高校の教科書には載っていたのだが、付属校で受験の心配がなくなおかつ男子校だったので古典の先生の


「大の男が源氏なんぞ読まなくていいんだ。お前らには3年間みっちり『奥の細道』を読ましてやる」


の判断で、僕たちは源氏物語とは縁が切れてしまったのだ。


「さすがにこれはまずい」と思った学年の有志が(僕は含まれていない。僕はいち早く芭蕉に魂を奪われてしまい、大学卒業までの数度、バイクで列車で自動車で「奥の細道」を辿ることになる)先生に要望に行ったら「野ざらし紀行」を教えてくれた。


「それじゃあんまりだ」と思った有志が(僕は含まれていない。以下略)さらに談判に行ったら西行をカリキュラムに組み入れてくれた。先生、そんなに僕たちを漂泊させたいんですか(そうか、今気づいた。僕の隠居願望はこのころから醸成されたのか。こりゃ根深いな)。


本当です。嘘だと思ったら同期の犬童一心監督(本名)に聞いてごらんなさい。


それはともかく朗読会。そんな似合わないところになぜ蕃茄山人が行ったかと言うと、題材が源氏ではなく、内田百間(本当は「門構えに月」だけど「門構えに月」は機種依存文字なので、以下「間」で)先生の「お伽噺集」だから。百間先生先生は大好き。


なぜ好きかと聞かれても困る。



スキダカラ、スキダ



としか答えようがない。



それよりもっと大きな理由。画家のエム・ナマエさんにお誘いいただいたから。


チラシもカッコよかった。

朗読会チラシ ←クリックして拡大。


会場は駅近くの「マレット」というカフェ。駅前の再開発ビル・コレットの脇の小路を入って、毎週日曜日の六時半に「ばかも〜〜〜ん」て怒鳴ってそうな婦人科病院のチョイ手前。



次に家の外壁を塗りかえるときはここにしようと決めたペンキ屋さんの向かい。




店内はすでにほぼ満員。最前列にナマエ氏の姿を認めるも挨拶もできぬまま奥の席へ。


僕が着席してほどなく始まった。


無名塾出身の山下智子さんの着物姿のお美しいことと言ったら・・・。また声の美しいこと。山奥の静かな湖のような声とでも言えばいいのか。深く落ち着いた響く声。抑制の効いた落ち着いた演出もいい。


構成もよかった。7,8分程度の短いお伽噺の間に1,2分程度の短い音楽(ショスタコーヴィチストラヴィンスキーなどの小品)を挟み緩急をつける。


底本の序文に曰く、


「この本のお話しには教訓はなんにも含まれて居りませんから、皆さんは安心して読んでください。どのお話しも、ただ読んだとおりに受け取つて下さればよろしいのです。」


なるほど、たしかに教訓はない。つまりオチがない。さらに言えばヤマもない。坦々と進む。淡々と進む。


でもなにかあるだろう、なにかあっただろう、いややっぱりないのかな、などと考える過程がまた楽しい。至福の時間。「わかりやすい」ことを珍重しすぎる昨今、実に貴重。


つまりミステリートレインなのだ、この朗読会は。「小田急線経堂発車」だけは決まっている。でも右に行くか左に行くか、天に昇るか地に潜るかは誰も知らない。そして突然、「はい終点です」と見知らぬ駅に放り出される。どうやって帰ってくるか、さらには「帰って来るか来ないのか」もその人次第。


そんなミステリートレインのような、そう、「阿房列車」のような朗読会だった。


山下智子さんの声が実に耳に心地よい。耳道楽。



終了後、ようやくエム・ナマエさんにご挨拶。貴重な機会をありがとうございました。ナマエさんにはさらに山下さんをご紹介いただいた。



かつては経堂から国立に帰る時(もちろん来る時も)、なにも考えずに小田急線(のぼり)で新宿に出て中央線に乗り換えて帰っていたが、今回初めて小田急線(くだり)で登戸に出て南武線に乗り換えて帰った。


この方が座って帰れるので楽。そして微妙に乗車時間も短い。ミステリートレインでも阿房列車でもないので「YaHooo路線検索」で瞬時に調べられる。便利。



そのナンブ・トレインにのんびり座って帰りながら、



「面白い店だったな、カフェ・マレット。でも店名の意味はなんだろう。マレビト、は考えすぎだよなぁ。わかったぞ。“マレット”ってマリンバとかシロフォンとかのバチ(撥)のことだよなぁ。だからつまり“打てば響く”と・・・。うーん、考えすぎかなぁ。でもこうやってどうでもいいことを考えることこそ至福の・・・・・・」


いつの間にすっかり眠ってしまい、気づくと終点・立川駅だった。


中央線に乗り換えて国立に帰った。<今日の1句>


春の夜の 阿房列車や どこへ往く


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