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そんなわけで元・切手の博物館副館長にして郵便学者・歴史学者である内藤陽介さんの講座「切手から見る戦争」を聞いてきたのである。国立市公民館主催歴史講座「“もの”が語る戦争の歴史」シリーズの第一弾。
郵便を通して国家と社会、時代や地域のあり方を硬軟とりまぜ縦横に語る自在な論考が光る気鋭の論者である。持論である「国家名義で発行される切手は、その国のイデオロギーや経済状態を世界に喧伝する『外交官』である」には大いに同意できるので「公民館だより」に告知が載った日に申し込んだ。
最新刊は『年賀状の戦後史』(角川oneテーマ21新書)。
タイトルの通り敗戦の焦土から立ち上がった日本人たちが年賀状に何を託してきたのかを考察する本。この本については蕃茄山人さんがいい書評を書いているのでご一読ください。
公民館の3階会議室に集まった聴衆は約20人。今回僕は平均年齢を・・・・微妙に下げたかな。
講座はプロジェクターを使いながらとてもわかりやすいものだった。
このジャンルの研究発表は「論文」というより「展示」だそうだ。「リーフ」と呼ばれるA4のパネル16枚が一単位とか。「JAPAN AND THE 15 YEARS’ WAR 1931〜1945」のタイトルで氏が発表し、コンペティションで金賞を受賞した作品をはじめとした画像をプロジェクターで映写しながらの「プレゼン」で実にわかりやすい。
目からウロコの新発見(いや単に僕の寡聞が故なんだが)いくつもあった。
○ 切手も重要だがより重要なのが消印。消印によってのみ「いつ」「どこで」使われたのかが知れる。これは貨幣では決してわかりえないことである。
○ 郵便の検閲は戦中よりも戦後のGHQのそれのほうが苛烈だった。それは「統制」と言うより、日本と言う得体の知れない島国の「世情、心情、思考に関する調査だった。
○ 速達の封筒上端の赤いライン。それもGHQの検閲のために始まった。膨大な郵便の中で速達を手早く峻別して処理するため。
○ 公文書による布告というのは現場における実施までにかならずタイムラグがある。それをカバーするのが消印のデータである。
○ 大戦末期、戦意高揚のため、福岡県筥崎宮の「敵国降伏」額をデザインされた切手がリリースされた。その「敵国降伏」額はもちろん 元寇の際の「神風、吹きますよーに」の呪術だ。ところがその切手を作ったがいいがすぐ敗戦。廃盤の憂き目となるところだったが、進駐軍に「敵国に降伏した記念の切手」と誤解され、コレクターアイテムとして非常に珍重されたという。
言うなれば切手を介した歴史探偵。あっという間の2時間だった。「満州国」の歴史と郵便の変遷の話題も、満州の話なら何でも聞きたい僕には非常に興奮するものだった。
ラストに質問タイム。僕は今講座ではじめて知った言葉の「加刷」について伺った。既存の切手に上から文字を刷り加えること。戦前の乃木希典の切手などにはずいぶんあるが、今の日本ではほぼない。Q.世界ではどうなんでしょう?
うむ、いい質問だ。いつもながら質問力が高い(自画自賛)。
A.世界的に見ると災害時の寄付金、政変による肖像画やシンボルのスミ塗り(つまり「易幟」ですな)などで現在でも良く行われている。とのこと。
なるほど、よくわかりました。ありがとうございます。<今日の一句>
花吹雪の ごとく舞い散れ その切手
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蕃茄山人はなぜステッキを持っているのか・・・・。