蓄音機がやってきた。
ゼンマイ式のクラシックなやつ。
たぶん昭和20年代後半くらいのもの。完動品。当ビブリオの看板娘・りんごほっぺより少しお姉さん。わかりやすく「必殺仕事人」で喩えると、りんごほっぺが鮎川いずみなら新着の蓄音機は三島ゆり子か。
ハモニカ奏者の松田幸一さん、通称・アリさんを通じてお預かりした。もとがどなたのものだったかは知らない。
レコードもついていた。約140枚。さっきようやく分類整理を終えた。
ジャンルはジャズ、ラテン、タンゴ、映画音楽など。お好みの音楽家はザビア・クガート(レコードには「ザビエル・クガー」と表記してある)、ベニー・グッドマン、ペレス・プラードなど。僕と好みが一緒で未知の大先輩にウェーブを送った。
洋楽好きなモダンな青年だと思う。ただかわったレコードもある。「トンコ節」なんてのもあるのだ。
これは・・・と僕は推理、もとい、妄想する。他のものは彼が純粋に好きな音楽だと思う。でもジャズとタンゴが好きなモダンな青年も勤め先では周りに合わせなきゃいけない。いくら好きだからって忘年会で「恋人よわれに帰れ」を原語で「Lover, Come Back to Me♪」と歌っても浮くだけである。そこで宴会の余興の練習用に買ったのが「トンコ節」だと推察する。
当然ながらどのレコードの音楽家はすべて故人である。60年以上前のものだから仕方がない。と思ったら今も現役バリバリの人がいた。
当時、少女歌手だった雪村いづみだ。すごいぜトン子(これは前述の「トンコ節」のことではなく雪村さんのニッネームである)。
蓄音機もレコードも量販品で「お宝」ということはないがそれなりに貴重。散逸を防ぐためにしばらくはお預かりすることにした。いつかは引き継いでくれる人が現れたら託したいと思う。条件は二つ、僕より若い人、そして個人。団体は責任があいまいになるし思い入れがある人がいなくなるととたんにゴミになっちゃうもんね。
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