師走と言うぐらいだから忙しいのだけど、すべてを投げ打って定時であがり、夜は落語に行った。
シネマ落語でダスティ・ホフマン、ロバート・レッドフォード「大統領の陰謀」。ご存知、立川志らく独演会「志らくのピン」 Part2である。国立演芸場にて。「くにたち」ではない「こくりつ」だ。先々月も行った。その時の演目はウディ・アレンの「マンハッタン」。品川心中と「マンハッタン」のジョイントという快作だった。
志らくさんは談志門下の俊才。シネマ落語と言って、古今の名作映画を落語に翻案するという活動を続けている。来年2月には国立芸術小ホールで公演がある。こちらは「こくりつ」ではない「くにたち」だ。
今回も志らくさんのブレーンで、講談社の名編集長・元木昌彦さんに声をかけていただき、伺うことになった。
同行は前回と同じく人形師の石塚公昭さん。カウント・ベイシー、チャーリー・パーカー等のジャズマンや、泉鏡花や江戸川乱歩等の文人、吉川潮氏の名作『突飛な芸人伝』の表紙の落語家の人形も手がけている方だ。
この「志らくのピンPart2」 では、毎月各界の著名人がプロデューサーを務め、いろいろな試みをするという趣向になっている。前回は高平哲郎さんがプロデューサーだった。
今回のプロデューサーは主宰の元木昌彦さんご自身だ。
「大統領の陰謀」はウォーターゲート事件の実録映画で、ダスティ・ホフマン、ロバート・レッドフォード扮する若手記者が大統領選挙にからむ盗聴事件を暴き、ニクソンを退陣に追い込むという快作だ。
志らくさんはこの映画を江戸時代の瓦版屋の若者二人に翻案し、目黒の秋刀魚と芝浜でサンドイッチしている。って言ってもわかりにくいね。つまり目黒の秋刀魚と芝浜を一つのストーリーに繋げたのだ。その間を取り持つのが「大統領の陰謀」。余計わかりにくいかな。
ちょっとだけネタばらしをすると、芝浜で勝五郎が拾う財布。昔から「誰が落としたんだ?」と突っ込まれていたけど、その謎を目黒の秋刀魚に見出すんだな。その狂言回しが瓦版屋の若者二人という趣向だ。
終演後は石塚さんと赤坂にでてマイアミのコーヒーを飲みながら荷風談義。石塚さんは来春、市川市で開かれる「永井荷風展」(市川市主催)に作品を出品されるそうだ。