駅ソバ戦争始末記

  昨日に引き続き、「駅ソバ」の話である。本当は別に書きたいこともあったのだがついで、というか流れ、なりゆきである。で、今日は「駅ソバ」の話。

 
  友人のトニー・セイント(仮名・40歳ぐらい)から聞いた話。トニーがまだ大学生のころのことだ。

  当時、トニーのおばさんは製麺工場を経営していた。ある駅ソバチェーンに麺を納入して経営は安定していた。

  ところがある日突然、駅ソバチェーンの仕入れ部長から、他社の製品に切り替えると言われたという。理由はわからないが一方的に通告されたらしい。

  でも黙っているおばさんじゃない。トニーが呼び出された。

  「いいアルバイトがあるわよ。お友達を7,8人集めて。男の子ね」


  特命が下った。そして次の日からトニー・チームは各駅ソバに散った。

  「かけソバ・・・」

  と注文する。ソバが来る。一口食べたら首をかしげて、

  「ちょっと・・・・麺替えた?」
  
  と言って、食べず残して帰ってくるというミッションだ。客の評判が悪いことを理由に翻意することを狙ったわけだ。

  
  それぞれが店をまわって、「麺替えた?」とやってくる。お金はかかるけど、一口しか食べないからいくらでもまわれる。トニー・チームは精力的にしらみつぶしにチェーン店をまわった。


  果たしてその効果は絶大、再び取引が開始された・・・・・・・とはならなかった。

  敵もさるもの引っかくものである。ライバル社もトニー・チームに倍するスタッフを集めてやっていたのだ。各店まわって、

「ちょっと・・・・麺替えた? 美味しいわぁ、おかわり」

と。


   できすぎた話だが本当の話だ。ちなみにおばさんの製麺工場、味はいいので今も繁盛しているそうある。