はなやぐらの会 in 銀座・吉水

 第一回はなやぐらの会に行ってきた。仲良しの義太夫三味線奏者・鶴澤寛也師匠のリサイタル。デビュー20年を記念して始めた個人リサイタルだ。

  女流義太夫についてご存じない方も多いだろうから、3月9日の日記から引用しよう。
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女流義太夫をご存知だろうか?

  明治〜大正にかけてはそれこそ大変な人気だった。当時は「娘義太夫」といって今で言うアイドルのような熱狂振りだったそうだ。「どうする連」なんてのがいてね、今で言う「追っかけ」。人気の太夫の舞台を追いかけては、「どうするどうする」なんて身悶えしていたらしい。

  それから100年近く経った現在も、その芸能は連綿と継承されている。興行の形こそ変わり「どうする連」もいなくなったが、根強いファンを持ち、月に一度の国立演芸場での定期公演もつねにほぼ満席だ。

  今を去ること20年前、数学者への道を投げ打って、まったく畑違いの義太夫三味線の世界に飛び込んだ一人の女性がいた。以来、努力と苦労を積み重ねて、斯界に確固たる地位を築きつつある。

  現在の鶴澤寛也師匠である。この「蕃茄庵日録」にもたびたび登場する僕の20年来の悪友だ。ほんとは僕のほうが一年先輩なのだけど先輩らしい扱いはただの一度も受けたことはない。いや、別に文句を言っているわけだけど。

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  現地にてエッセイストの坂崎重盛さん、翻訳家・大学教授にして最近では「ひとみパパ」の称号までもが上乗せになった金原瑞人さんと待ち合わせである。

  会場は、銀座に昨年オープンした和風旅館・吉水の「かくえホール」。ちょっとこじんまりとしていて、規格外サイズの僕などはエコノミー症候群になりそうだったけど、なかなかいい会場だ。寛也さんの先輩に当たる美貌の太夫・竹本越孝さんが受付をしていてドキドキした。

  今日の演目は義経千本桜「河連法眼館の段」。いわゆる「四の切」。狐忠信だ。

  賛助出演の太夫は大御所・竹本駒之助師匠。

  いいなあ駒之助師匠。豪快にして繊細、スピーディーにして可憐。30人の観衆の心をグッと片手で鷲掴みにしてウリャッ! と空中に放り投げるような膂力を感じさせる。

  教養のない僕などは、はっきり言ってわからない言葉だらけなんだけど、師匠の語りやその表情で、なぜかその内容がよくわかるのだ。

  約50分間、実に楽しく聞けた。なんか肩こりが治ったような気もした。


  で、そのあと軽く一杯引っ掛けることになるんだけど、それはまた明日。