浅草・大江戸タイムスリップの宿

(昨日の続き)

  東京タワーから日の出桟橋まで歩き、水上バスで浅草に向かった。

  お役者の舟乗り込みの気分である。隅田川を遡上する。

  
  40分ほどで浅草に着いた。とりあえず船着場から雷門に行き、仲見世をまっすぐ進み、観音様を参拝。そこから六区に出て花やしきを右目に見ながら「ひさご通り」に入る。

  二つ目の角を曲がったところが今晩の宿、「助六の宿 貞千代」旅館だ。

  この旅館、実は一部で凄く有名な旅館だ。「助六の宿」のキャッチフレーズに嘘はなく、館内は江戸情緒一色なのだ。

  蔵造り風の外観に黒の格子戸。入口には提灯が掲げられ、人力車がとめてある。中に入るとBGMは新内だ。壁には浮世絵や押絵が飾られている。

  部屋番号は角行燈に「?い?の四番」とか書いてある。客室内もいろいろ飾られている。漆の鞍や鉄の鐙、浮世絵、角樽などなど。ほとんど「出張!なんでも鑑定団」状態だ。

  この他に、10名以上の団体だと宴会にオプションで幇間、獅子舞を呼んだり、投扇興をやったり出来るそうだ。また「鬼平」などに取材した「江戸町衆料理」も楽しめる。

  と、このようにわかりやすく江戸情緒なのだ。外国人がイメージする「江戸時代」の雰囲気かな。

  事実、外国人向けのガイドブックにも必ず載っていて人気があるようで、僕が行った日も何組かの外国人ツーリストがいた。

  もちろん時代考証的にはチグハグなところもあるだろうし、素人の僕が見てもそこはかとないキッチュ感がないこともない。でもそれもテーマパークのようで楽しい。「泊まれる江戸村」って感じだ。

  だいたい近代的設備の整ったホテルに江戸情緒を盛り込むのだから、「そのまんま」というわけにはいかないのは当たり前だ。細かいことは言わずに外国からのお客様のように「ワンダフル」「ファンタスティック」と楽しむのが王道だと思う。  

  たぶん、もともとは普通の旅館かビジネスホテルだったんじゃないかな、と僕は推理する。しかし浅草も大きなホテルが出来る時代となって、また浅草時代が泊まる街ではなくなってきて、普通の営業をしていたんでは未来はないと考え、「江戸」に特化した大リニューアルを行ったのではないだろうか。だとすれば、このオーナー氏はすごい企画力を持った人だと思う。

  値段もお手ごろだ。うちは小学生二人を含む5人家族の一泊朝食つきで4万円でお釣りが来た(夕食は雷門近くまで出て、「葵丸進」で「金龍かきあげ丼」を食べた)。

  いずれにせよ、家族連れにもグループにもいい旅館だと思った。従業員の人たちも素朴で親切で気持ちがいい。これだけ特徴のある宿なのに押し付けがましさがまるでない。ここはお勧め。また泊まりたい。


「助六の宿 貞千代」旅館公式サイト